2002年1月の不定期日記 
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不定期日記



■ 2002.1.31  

 面白そうな紙面だったので、つい『BRUTUS』なぞ買ってしまったのだが、今回の特集記事『もう本なんか読まない?!』でいろんな本を紹介していて(要するに、読めって言いたいのね)、そのコメントの中に、

 的確な内容紹介と、心憎いまでの煽動、その両方が備わっていてほしいのだ。(『BRUTUS』2002年2月1日号)

 という一文があって、その通りだああッ、と思わずアジ演説に合いの手を入れる革命同志のように共感の意を示してしまったのであります。
 これ、読書エッセイや書評に対するコメントなんですが、文章一般に適用できますよね。煽動。これがなきゃ魅力的な文章と言えません。そそられません。あくまで私の趣味ですけど。

 
■ 2002.1.27  

 今日は東京に住む友人に会いに行ったついでに、早稲田大学の演劇博物館に行ってきました。展示は少ないながら面白いですが、ちょっと休憩したりするのにもよい感じの建物でした。感想はこちら

 ところで、自分でも忘れていたんだけど、先日誕生日でした。
 で、昨日今日といろんなものをもらいました。ありがとう。でも皆さあ、その品物を選んだ理由っていうのがさあ…
 
・真っ赤な長傘。すごく綺麗。
 ……友人から。「いくら傘よくなくすからって、家にビニール傘以外、一本も長い傘がないなんて信じられない!」<どうもすみません……
 
・某ブランドの基礎化粧品一式。
 ……母から。「あんたももう、いい年なんだから」<だって〜高いじゃん。

・サロンパスお徳用パック
 ……妹から。「筋肉痛って、まだちゃんと翌日に来る?」<むか、失礼な。来ますとも。

 いやもう、私の習性を知り尽くした実用的なものばかりで本当に嬉しいです。はい。

 
■ 2002.1.26  

 なれるものなら人畜無害な妖怪になって図書館に棲みつきたいと常々思っていたのだが、最近になって気が変わった。
 図書館もいいけど、大きな書店に棲みつくのでもいいなあ、と。
 
 東京なら、八重洲ブックセンターとか。京都のジュンク堂もかなりイイ。大阪なら旭屋が品揃えが渋くて素敵だ。
 全集ものの無骨な背表紙が並ぶ図書館のストイックな空気も捨て難いけど、大きな書店のカラフルな装丁の洪水も、果てしなく所有欲をかきたてるのです。そう、自分の手元に置くことができないなら、住み込んでしまえという発想。
 普段はひっそりと本棚に並ぶ本を眺めて暮らす。人が来たら、おどかさないように隠れる。図書館に比べて人も流れるから、本を選びにきた人を眺めていても、きっと飽きないしさびしくない。時々姿をあらわして、相手の反応を楽しむという娯楽もある。でも、あんまり姿を見せた結果、おばけ本屋の評判が立って店が流行らなくなったら悲しいから、程々にする。書店の店員は、時々本の位置が変わるので、何かいる、と漠然と感じたりする。でもとりあえず無害だから、座敷わらしのように放っておいてくれる……
 
 あ、あの、ひかないでください。
 今日八重洲ブックセンターの中二階の喫茶店で階下を眺めつつ、ぼーっとトリップしていただけです。
 隠遁願望強いな、私……

 
■ 2002.1.24  

 なんだか最近妙にテンションが落ちていて、じっとかるたの札など眺めてみる。
 この間、伊賀上野で買ってきた俳聖かるた。芭蕉と蕪村と去来と一茶とが収録されている。絵も素朴で可愛いんだこれが。
 そういえばここのところ、お正月にかるた遊びをしていない。小学生のとき以来くらいなブランクだから、ここのところなんてもんじゃないんですが実際。
 かるたの箱には「俳聖かるた早取り必勝法」なんていう紙も入っていて、かるた取り大会における必勝の心得を説いている。

 左記の表をよく勉強してください。先づ一字決まりの取り札を確実におぼえてください。例えば取り札の字でも絵でも見たらすぐ上の句が出るようにしてください。又、源平競技の時は自分の持札は決して敵方に取らせないように、特に自分の得意札は身近に並べるようにして下さい。
(以降、一字決まり札、二字決まり札、三次決まり札の表が続く)


 熱い。熱いですな。昨今これほど簡潔にして明快、その上確信に満ちた戦闘法指南があるでしょうか。清清しいほどです。が、……私にはできません。
 自慢じゃないですが、上の句の一文字だけで即座に下の句に対応させて、すかさず札を探してすっ飛ばすなんて、私には無理な話です。瞬間風速的な記憶力はいいけど、反射神経は悪いんです。シナプス弱いんです。トランプなら神経衰弱は滅法強いけど、スピードは全然ダメというタイプ。どちらかというと読み手をやって、源平合戦の阿鼻叫喚を涼しく眺めて楽しみたいです。<根性悪

 ばけそうな かさかすてらの しぐれかな

 中の句が頭の中でどうしても「傘カステラ」に変換されていけません。

 化けそうな 傘貸す寺の 時雨かな(蕪村)

■ 2002.1.22  

 所用があって、再び実家に帰ったついでに、伊賀上野に行ってきました。
 上野城を見て忍者屋敷に行って、芭蕉記念館に行って伊賀焼と俳聖かるたを買って。心の片隅で、「やっと『道に迷う』が更新できる〜」と思って……カメラ忘れました。相変わらず詰めが甘いです。

 しかし、伊賀上野が素晴らしいのは、街中にコンビニが一軒もなかったところです。近鉄上野市の周辺はかなり歩きましたが、一つも見つけられませんでした。惚れます。こういうところに住みたいです。生活力が根底から叩きなおされそうだ。

■ 2002.1.17  

 突然ですが、DYDOの「海洋深層水から生まれた MIU(ミウ)」って飲料、ご存知ですか?
 味はポカリをもうちょっと甘くした感じなんですが、ポイントはそこではなくて、そのペットボトルに、「深海生物フィギュアコレクション」のおまけがついている、というところです。ええ、実は、集めてるんです。

 はじめはですね、軽い気持ちで買ったのですよ。
 私は食べ物はともかく、飲み物に関してはわりとコンサバなので、無闇に新発売ものには手を出さないのですが、たまたま職場の社員食堂で売っていて、そのおまけのパッケージがすごく綺麗だったんです。私、こういうのに覿面に弱いです。ジャケ買い常習犯ですし。試しに買って、開けてみると、これが予想外に可愛い。かなり小さいフィギュアなんですが、かなり精巧です。ちゃんと台もついていて、台にその深海生物の名前と生息する海の深度が書いてあるんです。このマニア心を巧妙にくすぐる芸の細かさ。(写真をお見せできないのが残念)

 で、ですね。ひとつ手元にあるとですね。もうひとつ欲しくなります。今度はできれば、アレが当たるといいな、なんて淡い期待を持ってしまったりします。そしてもう1個買ってしまいます。あ、違うのが当たってしまった、なんてことになったりします。でもこれはこれで可愛いぞ。でもやっぱりアレが欲しいなあ、とさらに手を出します。すると、なんと今度はもう持っているヤツを掴んでしまったりします。むむむ。なにやら、闘志のようなものが湧いてきます。「当たるといいな」などという謙虚な期待は、遠からず「絶対当ててやる!」に変わります。欲望って、際限なく肥大するのです。

 チョコエッグのときは周りが騒いでいたのは知ってたんですけど、結局1つも買わなかったのでフィーバーには巻き込まれなかったんですが、これは最初の1個に手を出してしまった時点で、もう術中にかかったも同然なのでありましょう。
 キャンペーン期間が始まったのはもう随分前のようですが、社員食堂という立地条件のために回転が悪く、まだかなり在庫が残っている模様。がんばります。<いらんことばかり…

 しかし、今さらですけど、自分にこういう趣味があるとは思いませんでした。
 たまたま今まで触れる機会がなかったけど、例えば男に生まれて両親にプラモデルでも買い与えられて育っていれば、絶対プラモにハマっていたに違いありません。

 なんて話をしていたら、職場の同僚が、
「そうでしょそうでしょ。僕がガンダムのフィギュアコレクション、玄関に飾る気持ち、わかるでしょ?」
 ……いや、それはちょっとわかんないです。<玄関には飾らん。<そういう問題か?

■ 2002.1.14  

 遅まきながら萩尾望都にハマったという友人から、『トーマの心臓』を借りました。
 実を言うと、私も萩尾望都は『銀の三角』と『感謝知らずの男』しか読んでません(しかし、微妙に王道をはずれたものを……)。別に避けていたわけではなく、単純に手にとる機会がなかっただけなんですが。
 
 あの、これ言うのなぜかすごく恥ずかしいんですけど、いいですね。ほんとに。
 もっと早くに読んでおけばよかったと思います。なんというか、もっと切実にこういうお話が必要だった時期があったと思うんです。少なくとも、今読んでもすごく感動するけれども、そこにはそれを必要とする切実感はないのです。
 もうだいぶ年を食って、自分にも他人にもそこそこ嘘がつける今ではなくて、もっと汚れなき時代に読んでおくべきでした。
 
 はい、そこ。「汚れなき」のところに突っ込み入れないように。

■ 2002.1.13  

 あの……明日って、祝日だったんですね。今日気づきました。休みが減ったわけでもないのに、何かものすごく損した気分なのはどうしてでしょう。
 それはともかく、今日午後から、知り合いが出演している縁で、某アマチュアオーケストラの演奏会に行ってきました。というわけで、今日は音楽ネタに走ります。

 曲目のなかに、私の大好きなストラヴィンスキーの『火の鳥』があったんですが、聴きながら改めて思いました。ファゴット(実は私がやっている楽器です)って、つくづくこの作曲家に愛されているなあ、と。曲の要所要所、必ずファゴットを使ってくれます。しかも、ものすごく効果的に。要するに、おいしいソロ満載なんですね。まあ、愛が高じて凄まじい譜面だったりすることも多々なんですが。私は聴くだけでいいです。愛されているって、わかるだけでいいんです。それ以上は……

 演奏は、まあ知り合いが出ている&ライブであるという贔屓目もあるんでしょうけど、よかったです。ほんとに。すかっとしました。
 特に、曲の最後のほうにバスドラムと合奏が交互に演奏する、畳み掛けるようなフォルテッシモがあるんですね。ここは、聞いているほうも胸がすくように気持ちいいんですが、演奏するほうも気持ちいいでしょうね。あのバスドラム一発で、ホールを揺るがすような音が出せたときって、本当に爽快だろうと思います。あれは一度やってみたい。

 ただ、演奏者にはそういう気持ちよさとはまた別のカタルシスがあると思います。私はこの曲、実際に演奏したことはないけど、譜面は見たことがあります。はっきり言って、拍子わかんないです(1小節ごとに拍子が変わったりする)。変拍子、入れないです(曲の途中で吹き始めるタイミングがわからないということ)。数えてても、落ちます(休みの間、次の入りまで延々数えるんですが、途中でどこをやっているのかわからなくなった状態)。とにかく、通して演奏するということ自体が難しいんですよ。指揮者さえもよく振り間違える話を聞きます。

 だから、さんざん鬼門に続く鬼門を乗り越えて、あとは一直線にはじけるのみの終盤に突入したときには、もうあるのは解放感だけだと思います。終わった! 終わったよなんとか! もうほんとここまで曲が崩壊せずに辿りつけてよかった! 自分で自分を誉めてあげたいッ! という気分。わかっていただけますでしょうか、この気持ち。

 自分もオーケストラやっているもので、その気持ちが手にとるようにわかるだけに、曲が終わると、マラソンのゴールインを見たときのような、「うおおおよくやったッ!」という汗臭い感動が、ちょっと、いえ、かなり混じってたりします。
 ああストラヴィンスキー、演奏者のそんな快感まで考慮して、あんな曲を書いてくれたんだろうか。<いや、絶対単に彼の趣味。

■ 2002.1.10  

 年末の大掃除も空しく、散らかりはじめた部屋を片付けていて、ほんとうに自分は、どうして出したものを、出したところへ、使い終わったらすぐに戻すことができないのだろうと不思議になりました(<今さら)。でも、逆にこれができたら、自分が自分じゃない感じ。
 そんなことをしていて、ふとぼろぼろになったペーパーバックの『不思議の国のアリス』が出てきて、ぼーっとその挿絵を見ているうちに、しょうもないこと思いついたわけです。やれやれ。

■ 2002.1.8  

 生まれてはじめて、七草粥食べました。でもそれが自分で作ったお粥だってところが、信憑性に欠けるところです。作り方合ってるんだろうか。一応、米から炊いたんだが。しかも今日食べるべきものなのかどうかもいまいち不明。
 七草は、結構草の味しますね。<ってどんなんだ。

■ 2002.1.6  

 昼間っからおでんを煮つつ、ネットするわたくし(今現在13:56)。
 これって、なんだか主婦っぽいぞ(嬉)。掃除嫌いで手のかかる料理嫌いで、洗濯が唯一好きだけど干すのが嫌いで取り込むのも嫌いで、預金残高を全然覚えない自分に主婦は到底無理だと思っていたし、同意見を私の実態を知る多数から嫌というほど指摘されていたが。
 やればできるじゃないの(<出た。根拠のない自信)。
 しかも、昼から作りはじめたのは、ちゃんといったん冷まして夜までに味を染み込ませる作戦という、深謀遠慮から。ワイドショーじゃなくてネットっていうのが今時感あってますます良いぞ……とひとり悦に入りつつ、実は今日起きたのが11時だという時点でダメじゃんという突っ込みは無視します。

 というか、うわあああ今WEB本の雑誌を見てたら、去年の十二月にポール・オースターの『偶然の音楽』が文庫化されていたではないか! またしても痛恨のチェックミス。今から買いに行ってきます。

■ 2002.1.5  


 馬って、コツを掴めば結構描きやすいなあと、去年年賀状を書いていて思ったり。犬のほうがそれらしく描くのが難しい。

 てなことよりショッキングなニュースが! 
 ……コンポのCDプレイヤーが壊れました。
 今日の昼頃、CDを入れ替えたら、そのままうんともすんとも言わなくなりました。確かに酷使していたからなあ。
 でも、この音絶ち状態、今日半日ですでに禁断症状が。といっても修理を頼むには保証書を探さなければいけないんですが、ひょっとして年末の大掃除で捨てたくさいという疑惑が浮上しています。ピンチ。

■ 2002.1.3  

 あけまして、おめでとうございます。

 お正月といえば、紅白。
 しょっぱなのえなりくんに予想外のダメージを受け(<役者のくせに歌がうまいなんて詐欺だ!)、中盤のドリフに涙し(<な、懐かしい〜…)、後半はお酒が回っててよく覚えてません。

 お正月といえば、特番。
 不覚にも、『筋肉番付』をついつい最後まで見てしまう。プロレスファンが昔より減ったのは、古館伊知郎が中継をしなくなったからではないのかと、あのトークを聞きながら思う。

 お正月といえば、おせち。
 おせちはちょっとずつだからおいしいのですね。いつも実家に帰るとおせち攻めにされてうんざりしていたのですが、今年は旅先の旅館でいただきました。いや美味でした。でも、調子に乗ってご飯2杯おかわりしたのはやりすぎでした。

 お正月といえば、雪。
 今年は年末から山形に旅行に行き、その足で実家にちょっと顔を出しました。山形は勿論、雪。これはいいです。山形新幹線は吹雪いてても予定通り運行しているし、そもそも雪を見に行ったのですから。しかし、普段ほとんど積雪のない実家地方も、雪。これはいけません。しかも、私が帰るときになって、大雪。東海道線は当然のように全面麻痺。普段1時間半で帰れるところを4時間かけて帰宅。毎年1回や2回はこんなふうに雪で全面的にダイヤが乱れてるんですから、そろそろ何か対策を打って欲しいところ。

 そして、帰宅しておもむろに新しいカレンダーをめくる。
 年末に買った、アンディ・ウォーホルのカレンダー。ちょっとわくわくしながら表紙をめくると、1月はあの有名な毛沢東主席のイラスト。1月中は毎日、机に座ると目の前に毛沢東主席が拝めます。

 こんな新年。こんな私です。

 今年もよろしくお願い致します。


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