2002年3月の不定期日記 
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不定期日記



■ 2002.3.31  春雷

 どたばたしていたここ半月ほどの間で、部屋のなかがすっごいことになっていて、昨日今日とかけてなんとか復旧しました。片付けという作業にはいつも、でもまた散らかるんだろうなあ…という無常感が伴います。
 いや、無常感以前に、思考パターンからしてすでに不精者だ、私……

 夕方頃に買い物に出た帰りがけに、あたりが一瞬ぴかっと閃いたから、来るかな、と思ったとおり、今すごい雷です。今年の春は特に荒れている感じがするなあ。でも、あの雷の音は、私は結構好きです。できれば窓を開けて聞いていたい。でも、雨が降り込んだりした場合の後片付けを考えると面倒なので、やりませんけど。

■ 2002.3.30  

 休日の午前中は大概寝ているのですが、今日は選挙カーに叩き起こされ、かなりご機嫌斜めです。
 選挙カー、これでもかなり減ったほうだとは思いますが、あれ効果あるんでしょうか。私なんか、寝起き頭にも、今通ったヤツには絶対投票しないぜと心に誓ったもんですが、残念なことにどの候補者なのか分かりませんでした。こっちは寝起きだったし、向こうは音響の悪いマイクで「ありがとうございますッ」「よろしくお願いしますッ」を連発しているだけだったし。

 それにしても、私が参加した限り、選挙って、どうしてこうわくわく感がないんでしょうね。
 仮にも一国一城の主(と言って語弊があれば、ある組織のTOPと言ってもいいんですが)を選ぶのに、こんなにローテンションなのはなんでかしら。それでも今回は市長選挙だから、議員選挙なんかに比べれば、まだしも興味はわきますが。
 首相選挙とかやったら、ものすごく面白いと思うんだけどなあ……アメリカの大統領選みたいに夜討ち朝駆けで全国選挙活動して、マスコミ巻き込んで情報戦やって。ある程度露骨な地元利益誘導型公約だってアリでしょう。それでこそ選挙に関心を持つわけです。損も得もなけりゃ無関心にもなります。
 とりあえず私の場合、選挙カーの禁止と住民税の使途全公開を公約してくれりゃ、その人に投票しますわ。

■ 2002.3.29  

 ふふふ。
 終わった。終わったよ3月! ブラボー!!! もうこの半月ほどがどれほど長かったか!
 あとは野となれ山となれー!

 帰りの電車を待つ間に、久々に本を読みました。ここのところ、目と頭が疲れるからって、何も読んでなかったんです。途中で止めるのが嫌で、電車4本やり過ごしました。
 久々に、本当に久々に絵を描きました。嬉しかったです。これまで、絵描くのがこれほど嬉しかったことって、ないです。出来上がったものは、かなり勘が狂っている上に雑いですが。
 あと、やり残しは、花見で暴れることのみ。

■ 2002.3.26  

 偏頭痛がします。これ、かなりイケナイ兆候です。
 体調不良はまっさきに胃腸に来る人間なのに、そこをすっ飛ばして頭痛に来るのはタチの悪いモノの証拠です。

 タチが悪いと言えば、嘘つきは泥棒の始まりなんていうださい紋切り型は放っておくとして、嘘を吐いたことがないなんて人を、私は信用しません。そんな人がいるとすれば、途方もなく鈍感であるとしか思えない。そんなことを大真面目で口にする人に至っては、もう「ムー大陸は存在した!」級の悪い冗談としか思えない。
 その点においてだけ、私は『悪人礼讃』の信奉者です。

 今日は本当に碌でもないことを書きそうなので、これにてフェードアウト。

■ 2002.3.25  

 新幹線の時間までにはまだ少しあったので、手近な喫茶店に入ることにした。
 発車のアナウンスと大きな荷物を抱えた人々の流れに逆らうように駅を抜け、気に止めるともなく止めている店に向かう。駅で時間を潰すことは多いから、喫茶店と本屋の位置は大概押さえている。混んでいる店は御免だ。ましてや、並ぶなど。
 幸いなことに、何度か時間つぶしに使ったことのあるその店は、表から覗いた限りではすんなりと入れそうだった。少し照明を落とした店内に入り、こちらを向いてくれた店員に、指を一本立てて見せる。
 案内された席に荷物を投げ出し、ついさっき買ったばかりの本の袋はテーブルの上に置く。薄いマフラーを首から抜き取って丸めたところで、案内してくれた店員が水のグラスを持ってきた。
 グラスは二つあった。

 注文は決まりきっていたのだけれど、お決まりになりましたらお呼びくださいと言って店員はするりと離れて行ってしまった。声をかけるタイミングが悪かった。どの道急いでいるわけではない。
 それにしても、と私は目の前のグラスを眺める。
 こういうことも、たまにはあるらしい。駅ビルのなかという粗雑な場所にある割には、ここは店全体に躾が行き届いた喫茶店だった。まあ、グラスが多くて困るということはない。逆に、いつ気づくだろうかと、ちょっと面白がってしまったのも事実だ。
 通りかかった別の店員に、カフェオレを注文した。かしこまりましたと言って、彼はメニューをさげて行った。
 これは本格的だな、と肩を竦めて、とりあえずテーブルの上の本を取り出した。

 また散財してしまった。大判の、箱入りのハードカバー。本体は鮮やかな紫の布張りである。厚さは六、七センチか、かなり重い。箱についた帯は少し色が褪せて、小さな破れ目がある。どうせ自分もそれほど丁寧な扱いをしないくせに、こういうのは案外気になるもので、書店員に、人にあげるものなのでできれば新しいものがないかと聞いたのだが、あいにく出ているだけだと言う。それなら仕方ないと、そのまま買った。でなければ、またその本を見つけられるかどうかわからなかったからだ。
 本を買うときは、それが自分のためだろうがそうでなかろうが、いつも衝動的だ。きちんと眺めてから買うということができない。それで失敗することも多い。
 などとぼんやりしている間に、そいつはやってきた。こつこつとテーブルを叩いて、小さく手を振る。
 やっぱりここにいた、と苦笑しながら、そいつは向かいの席に座った。あんたの連絡はいっつもぎりぎりやから。ちょっと古めかしい花柄のワンピースの裾が、目の端に広がる。相変わらず時代がかった趣味である。
 これ、あんたが前に言っとった本やろ、と、広げた本を閉じて、表紙を見せてやった。
 え? あ、そうそう、へえーこんな本になったんや。
 向かいから手を伸ばして、布張りの本をぱらぱらと捲る。
 結構、いい感じやなあ。すきやわ、こういうの。
 そうかあ? その表紙の色はちょっとなあ。
 えー、いいやん、このデカダンな感じ。この美学、わかれへんかなあ。
 言いながら、すっと身を引く。カフォオレがやってきたからだ。背の高いカフェオレグラスを置くと、店員はまた何も言わずにさがっていった。
 私がカフェオレを啜っている間も、そいつは感慨深げに本をひっくり返し、背表紙や裏表紙を見たり、目次のレイアウトを見たりしながら、ふーんだのへえーだの言っている。
 もともとその本は、そいつに教えてもらったものだった。作者は聞いたことのない名前だった。極端に寡作な作家で、しかも今は活動していないという。昔、二十歳かそこらで書いた何作かが残っているだけで、一部でその当時も高く評価されたらしいが、一般受けはしなかったらしい。それが、出版社のどういう気紛れか、最近愛蔵版が出版されたので、見つけたら教えてくれと言われていたのだ。
 でも、あんたよう覚えとったなあ、とそいつは笑った。全然音沙汰なかったから、もう忘れとるもんかと思とった。
 今日たまたま見かけて思い出してん。
 嘘ではない。新幹線のなかで読む本を見繕うために本屋に入って、本当にたまたまその背表紙が目に入ったのだ。
 どうする、と私は聞いた。それ、持っていく?
 うーん、とそいつはちょっと考えて、ええわ、と言った。
 なんで。欲しいゆうとったやん。
 あんた読んでからでええわ。今日、このまま帰るんやろ?
 んー、まあそやけど。
 ちょっとどんな感じに出来上がったんか、見たかってん。話の内容自体は知っとるし。
 なんやそれ、と言う間もなく、そいつは立ち上がった。
 ありがとな。それ、読んだら感想聞かしてな。ほんじゃ、あたしももう行かなあかんさけ。
 来たときと同じように唐突に、そいつは去っていった。電車、気をつけてな、と言いながら。

 やれやれ、と思いながら、私はテーブルの上の本を取り上げた。電車じゃなくて新幹線だって、何度言えばわかるんだろう。
 表紙を開いて、何枚か内表紙を繰ると、作者の写真が載っていた。古めかしい花柄のワンピースで、アンティークな椅子に寄りかかった姿。二十歳ごろというには、随分幼い感じの面立ち。
 昔から、唐突なやつだった。まるで神様のお告げででも動いているかのように、ふいっとやってきて、好きなことを言って、ふいっと帰るやつだった。そして、ふいっと帰った帰り道、ふいっと交通事故に遭ってふいっといなくなってしまった。
 本を閉じて、勘定書を掴む。動作の流れのついでに腕時計を見て、げ、と思わず声を漏らした。新幹線の時間はとうに過ぎていた。時間に無頓着なのも、相変わらずだ。
 今度、グラスが余分に置かれたときには、すぐにさげてもらうようにしなければならない。


*********


 ただいま戻りまして候。
 
 いきなりコイツ血迷ったかとお思いでございましょう。失礼しました。
 実家に帰ると読みたい本はないし聞きたいCDはないし、テレビを見る気にもならないし、家事は家族に先回りされて手伝わせてもらえないしで、暇で暇で死にそうになります。で、ついつい暇つぶしに、ろくでもないものを書き散らしてしまいます。
 しかも、真実が混じっているし。見てきたような嘘が書ける人って、素敵ですねえ。
 さて、この中で実際のできごとはどれでしょう?(笑)

■ 2002.3.22  

 なんだか知らないけれど、身の周りが結婚ラッシュです。そんな季節なんですねえ。というか、そんなトシだったか。
 聞けば、同年代の友人たちも、そろそろ両親親戚にちくちくと言われているようですね。私の場合、両親からはさっぱり何も言われないんですが、どうもすぐ下の妹はなにがしか言われているらしい。これって、どういうこと? 信頼されていると思えばいいのか、諦められていると思えばいいのか。
 しかしウチの母、表面上淡白そうな顔をしていても、油断はできない。
 何せ私は、成人式のときの門外不出の写真を、まだ母に握られているのだ。あれもそもそも、成人式の2日前にいきなり下宿に電話がかかってきて、着物を調達したから帰って来いと言われ、仕方なく帰ったら着付けから美容室から写真屋さんまですべての手配がされた後だったという、私にとってはまるで詐欺のようなイベントだったが。
 できあがった写真は一度見せてもらっただけで(いやもう、二目と見たいもんじゃないですが)、どこかに仕舞い込まれてしまって、実家に帰るたびに追求するんだが、のらりくらりとかわされる。
 あれだけは処分しないと成仏できません。

 というわけで、ちょっくら実家に帰ってきます。メインは親戚の結婚式ですが、懲りずに実家のガサ入れもしてこようと思っている。

■ 2002.3.21  

 すごい風でした。
 そう、春ってこういうイメージです。花も草木も元気になるけど、その生命力を試すかのように風も吹けば雷も鳴る。冬の間に雌伏していたのは、草木だけではないと言わんばかりに、いろんなものが暴れ出す感じ。
 逆に、夏には私はあまり混沌は感じません。夏は夜です。微動だにしない空気が充満し、枠という枠が溶け出す感じ。それから、台風。とにかく嵐が好きなのかも。
 だから、今日のような日は、何も用事がなくても外に出かけてしまう。普段、重度の出不精のくせに。

 明日までに、通勤途中の道沿いの桜はどれくらい残っているかな。今日の大風を凌いだ強者だから、さぞかし美しいことだろう。

■ 2002.3.17  

 昨日ぶーたれていたIE6のヘンなツールバー(イメージツールバーと言うらしいです)については、解決しました。
 「ツール」>「インターネットオプション」>「詳細設定」タブ で、「イメージツールバーを有効にする(再起動が必要)」のチェックを外して、マシン再起動、です。ああ、すっきりした。

 コンテンツ更新する余裕が全然ないので、せめて日記くらいキャンペーン実施中。<しかしこれもいつまで続くか……
 各方面に不義理を働いております。申し訳ありません。
 恒例行事となりつつある年度末大騒動は今年もやってきていて、今年もまた花見はお預けの模様です。というか、今行ったら暴れそうです。
 清少納言女史の「春はあけぼの」には賛同しかねます。春は混沌。春は嵐。花も風も私も凶暴になります。<私だけ?
 春一番も、吹きましたしね。

 深呼吸。

 さて、久しぶりに読んだ京極センセの『巷説百物語』、昨日の日記で怪談繋がりと言ってしまいましたが、実は全然怖くないです。そもそも、今まで読んだ京極センセのお話で心底怖かったものはないんですが(<怖がる以前によこしまな考えが漲っているせいかもしれません…)これはもう、『必殺仕事人』の世界です。まだ3話目くらいまでしか読んでないんですが、しかしこれだけの予定調和が快感なのも、ひとえに京極センセの語りの巧さの賜物ですね。ちなみに、私はおぎんが好きです。<すぐにこういう方面に走る……

 というわけで、明日からまた少々沈没すると思われますが、生きてます。大丈夫です。
 桜なんかに、負けません。

■ 2002.3.16  

 サブマリン、ようやく浮上。

 今日のようなお休みの日くらいは、気分転換にどこかに出かけよう、下で吼えているように『指輪』を観に行こう、と思っていたのに、起きたら昼を過ぎていて、あえなく断念。

 仕方なく、前々からやろうと思っていたブラウザのバージョンアップをこの機会にやろう、とダウンロードをはじめたのですが、この行動がまたメンタル的に大失敗。あああ仕事を思い出す〜 いやだ〜(ぶんぶん←頭振って悶えてます)

 その上、今回はすんなりインストールできたものの、新しいIE6は、画像の上にマウスカーソルが乗るたびに、ヘンなツールバーが表示されて、かなり鬱陶しくてご立腹気味。どなたか、この設定外す方法ご存知ないでしょうか。今の私にはIEの設定を隅々まで家捜しする気力は残っておりませぬ。

 こんな弱りきった状態で、中島らもの『アマニタ・パンセリナ』などに手を出してしまった私は、もうマゾっ気を否定できる余地はありません。全編是おクスリの話なんですが、もう怪談読んでるノリです。ぞくぞくします。誰もがふとした拍子に陥るかもしれない奈落が、もぐら叩きの穴のように並んでいる様を見るようとでも申しますか。青少年育成なんちゃらを言い出すならば、これを文部省推薦図書にすべきです。らもさんは身体を張っているのです。

 『アマニタ…』を怖いもの見たさで一気読みしてしまったので、今日はこのまま怪談繋がりで、京極センセの『巷説百物語』に突入します。ああ、ぞくぞく。

 ちなみに、これまで読んだ怪談私的ベスト3。
  1.『人間椅子』(江戸川乱歩 新潮文庫『江戸川乱歩傑作選』収録)
  2.『カニバリズム論』(中野美代子 福武文庫)
  3.『薬』(魯迅/丸尾常喜 訳 河出文庫『中国怪談集』収録)

 3.の収録されている『中国怪談集』は、他にもぞわぞわくる小品が勢ぞろいの秀逸なセレクション。2.の中野美代子さんが編集に入ってます。この方も怖い………
 ふた足ほど早い、夏への誘いでした。

■ 2002.3.13  

朝 9:00 出社早々、昨日出したメールが相手先のメールサーバが原因で戻ってきていた。昨日出した意味がないじゃんかよう〜とぼやきながら再送。海面下5Mに沈む。
 
11:00頃 ディスプレイにかじりついて、「今忙しいんです声かけるな」オーラを撒き散らしながら仕事した甲斐あって、打ち合わせ用資料が八割がた出来上がる。上司に見せるためにプリントアウトしようとしたら、プリンタのトナーセットミスで真っ黒な紙が排出される。
海深100Mまで潜水。
 
12:30頃 お昼ご飯を買いに行って、財布に561円しか入っていないことにレジの前で気づく。
海深300M。
 
14:00頃 今日はお客さんから長い電話がかかってこないぞ、しめしめ、と思っていると内線電話がガンガンかかってくる。しまいに、どこの管理職か知らないが、「あれ、キミ誰?」などという仁義なき間違い電話が。
電話を簀巻きにしたいと思いながら、海深800M。
 
14:48(←ええ、しっかり覚えてますとも) 開発用サーバがひとつ壊れる。復旧に駆り出され、助っ人だったはずが「あ、今から会議なんだ。悪い、あと頼んだ!」 なんだとぉぉう!
大陸棚を転げ落ちる。海深1600M。
 
16:50頃 ようやくサーバ復旧。もとが相当ぼろい上に、正管理者が最近ソフトを追加インストールした影響で、環境を壊したようだ。張本人は休暇中。このパターン、多いな……今は懐かしきマーフィーの法則?
深層海流に乗って、海深2200M。
 
18:30頃 定例ミーティングが終わったら、すでに外は暗い。そして、手つかずの今日の午後のノルマが。
ちょうちんアンコウさん、こんにちは。海深3000M。
 
21:00頃 引き継いだプログラムの内容が仕様書と全然違うことが発覚。あーあ、全面改訂決定。
海深7000M。
 
22:15頃 一緒に残っていた営業さんが帰り間際に、、「お昼の残りだけど」と、ドーナツをくれる。ああ〜お腹減ってたんです〜(涙)
水面下10Mまで浮上。
 

 ………我ながら、現金。



■ 2002.3.6  

◇今日の『指輪物語』………第一部読了。脳裏のスクリーンいっぱいに、TO BE CONTINUED という文字が浮かんだ私は、救いがたくRPGゲームに毒されています。ああサムってば、ほんとにいい奴だ〜

 なんだか、大河のようなお話です。陳腐な表現ですが、他にうまく表現する語彙が見つかりません。
 いろんな細かいことはなぎ倒して、とにもかくにもお話は進んでいってしまうという感じ。当事者たちにはもっと深刻な悩みも確執も悲しみもあるのでしょうが、筆致がひどく淡々としていて、懇切丁寧な心理描写や情景描写の小説を読み慣れた人間には、正直言って、え、え、このエピソードこれで終わりなの? これ、このままにして行っちゃうの? それで解決なの? と右往左往しきりです。特に私のように枝葉末節に脱線するのが好きな、重箱の隅をほじくり返すタイプ(過去の今日の『指輪物語』を読み返してもありありとわかるなあ、この性癖……どうでもいいことばっかり(笑))には、読んでいる最中、ちょっと足の裏が痒い感じがしてなりませんでした。

 ただ、それって逆に言うと、作品の世界がそれだけ深いっていうことなのかも、とも思います。だいたい小説で書かれるような綺麗なオチは、現実の世界にはそうないですし。出来事は一瞬一瞬で、起こったときにはもう過去に流れていて、そのとき何を感じたかも一瞬で流れてしまうことがほとんどです。そういえばあれはどうなったんだろう、あのとき会った人はどうしてるんだろうと思い返すことがあっても、概ねそれを踏み潰して日々生活している。現実の世界に、予定調和はない。あるとすれば、それはあとからつけた理屈に違いない。

 であればこそ、『指輪』を読んでいて、あれほど彼らと一緒に旅をしている気分になれるのだろうと思います。オチがつかずに中途半端になっているところも、きっとどこかで同時進行しているに違いないという気になります。
 語りは騙りであるのだし。こういう騙しかたをしてくれるお話は素敵です。大好きです。存分にトリップさせてくれる。

 というわけで、これで心おきなく、映画を観に行けるぞおぉ〜(心の叫び)

■ 2002.3.3  

◇今日の『指輪物語』………は、今日はお休み。

 というのも、今日ティッシュが切れたので仕方なく買い物に出たら、通りすがりの本屋さんでリブ・タイラーにつかまってしまったのです。勿論ほんものではなく、『ELLE』の表紙。ものすごく久しぶりにファッション誌を買いました。分厚い。重い。嬉々として隅から隅まで眺めていたら、2時間以上経っていました。
 私の場合、こういうファッション誌は画集や写真集のノリで買います。紹介されているものを買ったりしたことはほとんどありません。っていうか、買えません。分不相応ってものです。
 でも、目の肥やしとして見るのはすごく好きです。雑誌のつくり自体、綺麗な装丁だなあと思います。隅々まで神経が行き届いている感じ。どこの広告も美しいし。インスピレーションをビシビシ感じます。でも、それが自分の生活や感性に活かされるかというと、これまた別問題なんですよねえ…
 しかし『ELLE』、セレブセレブと連呼するところだけは、ちょい白けますな。

 さて、最寄の商店街はひなまつりフェア真っ盛りですが、桜餅は4つ入りしか見つけられず(さすがに一人で4つはきつい。お茶仲間の管理人さんは最近歯が痛いと仰せだったので誘えないし)買うのは断念し、という以前に今週ほとんど自炊ができずに、前に買い込んだ食料が結構残っていることを思い出して、今日は冷蔵庫の残り物掃討作戦に出ました。

 冷蔵庫のなかみを確認してみましょう。
 使いかけのにんじん。使いかけの大根。使いかけのベーコン。使いかけの冷凍グリンピース。コップ一杯分あるかないかの牛乳。半端に残っているシチューのルウ。

 ぴーん。決定。スープ・スパです。(というか、これ以外の選択肢はない)

 にんじん、大根は細かく切ってグリンピースとベーコンと一緒に炒め……って、おおっとベーコン、賞味期限が微妙です(ありていに言えば、切れてる)が、まあ火を通すし、きっと大丈夫だ。並行してスパゲッティを茹でます。野菜などなどに火が通ったら水を加えてひと煮立ち。シチューのルウを加えてまたぐつぐつ。牛乳も少しずつ加えます。スパが茹で上がったらスープの鍋に移して、最後の微調整で胡椒など少々加えてできあがりです。
 この組み合わせに大根はちょっとどうかなと最初思ったんですが、量が少なかったので全体の味に違和感はありませんでした。
 実はこのやり方、今日はじめて試みたのですが、結構使えることが判明。ルウって、いつも半端な量が余るんですよね。今度は同じく余っているカレーのルウで挑戦します。

 って、よく考えたら、掃討してしまったら明日からの食料がないではないか。がーん。

■ 2002.3.2  

◇今日の『指輪物語』………女王様登場。それにしても、ガンダルフはどうなっちゃうんでしょうか。復活の呪文はないのでしょうか。


 命名センスや言葉のセンスが試される仕事というと、コピーライターや企画職とかが思いつきますが、システムの世界でも、意外に命名センスが試される機会が多いです。プログラムには、基本的に必ず一意の名前をつけなければいけないし、日常的には自分のマシンやサーバを構築したら、そいつに名前をつけてやらねばならないのです。これ、たまに直面すると、結構面倒なんですよね。
 プログラムには大抵命名ルールがあったりするので、どちらかというと膨大な数のプログラムの名前を全部把握し、管理するほうが大変なんですが、問題はマシン名です。

 コピーライターや企画さんという方々は、むしろそういうことを得意としている人が集まるものなので安心できます。名前をつける、という行為には、それがどんなものであれ、自分も他人もその名前を口にし、使われることへの、ある種の覚悟がいるような気がします。

 ところが、そんな覚悟も心得もないまま、というか、よもやそんな能力が必要とは夢にも思わずにシステム系の職場に入ってきて、ある日サーバの構築を指示されて、ハタと「名前、どうしよう」と思うわけです。自分のマシン程度なら、ヘンな名前つけても影響範囲は知れています。せいぜいがLAN上に、「ziong」とか「grifindoll」とかいうマシン名が見えて、ネットワーク管理者がせせら笑うくらいです。
 これがサーバとなってくると話は変わってきます。だって、部内サーバとかだったら、皆使うんですよ、その名前。「miffyに繋がらないんだけど」とか、「そのファイル、kobanzameにあげといて」とか言うんですよ。みっともない名前、つけられませんよこれは。

 とか言ってて、前に私がつけたサーバ名は「Chihiro」でした。「Haku」ってつけなかっただけ自制心が働いたと思います。あ、一応、開発テスト用サーバなので、恥は開発チーム内にとどまっています。前々から動物の名前でサーバ名を統一していたという同期の部署では、担当者の趣味で「momonga」とかいう名前がついたそうな。あああ、こんな名前が飛び交う職場って……
 でも、今度自分用の新しいPCが支給されることになったんですが、名前、「Legolas」ってつけたいんですけど。「Aragorn」でもいいです。


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