2002年10月の不定期日記 
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不定期日記



■ 2002.10.27   明日の米がない

 米櫃を逆さにしても、半合もない。これではさすがにお粥も厳しい。頼みの綱のうどんも蕎麦も切れている。どうしてこうタイミング悪く窮乏状態に陥るのか。仕方がないので、本屋に行ってきました。……あいや、前の文との脈絡が全くないですね。

 いやだって、スーパーに行く前に本屋があるんですよ。意志が弱い私は素通りできないんです。
 店に入るや平積み台は華々しくハリー・ポッターに占拠されている。しかし4巻上下は売り切れだそうな。恐るべしハリポタ旋風。こうもベストセラーになると、なんだか引いてしまうのが私の悪いところ。ほとぼりが冷めた頃に妹ルートで借りるか、と思い直して、文庫の棚へ。
 最近の嬉しい文庫はちくま文庫。出てた、出てたよ、『阿房列車』! 内田百閧ナすよ! なんとちくま文庫が内田百闖W成を文庫で出すという蛮挙、もとい快挙を! いやでも蛮挙かも。だって売れなかったら途中で刊行が止まりそうだ。何せ全12巻配本。ただ、ちくま文庫って高いのが難点なんだよなあ……いやいや、私は追っ掛けるって、もう決めたのだ。しかし、その隣に置いてある『日本の葬式』って……本屋での本の並びって、ときどきとてもシュールだ。

 ……というわけで、今日の熱に浮かされたお買い物。
 ・『阿房列車』(内田百閨@ちくま文庫)
 ・『日本の葬式』(井ノ口章次 ちくま文庫)←思わず買っちゃったよ。真面目な民俗学の本のよう。
 ・『尾崎翠 集成(上)』(中野翠・編 ちくま文庫)
 ・『バーナード・リーチ 日本絵日記』(バーナード・リーチ/柳宗悦・訳 講談社学術文庫)
 ・GASPARD & LISA 2003 CALENDER ←もう来年の買っちゃった。

 ……あ、ちゃんとその後、米買いましたよ。あやうく緊迫財政に陥るところでしたが。


■ 2002.10.26   停滞

 どうも、アウトプット系のテンションが落ちている。字を書くのも絵を描くのも料理するのすらも面倒くさい。サイトの更新でもしてみれば気が晴れるかしら……と溜め込んでいた材料で更新してみたものの、頭痛が増すばかり……って、風邪じゃないか。またか。どうも頭が重くてものを考えられないと思った。くそう、絶対会社のメンバーに伝染されたに違いない。ああまた今年もひと冬流行の風邪を残らずモニターしてしまうのか。って、この口調、『血の12幻想』(津原泰水・監修 講談社文庫)の中の『ちまみれ家族』が乗りうつっているではないか。ああ津原泰水様ファンです。大好きですああいうスラップスティック。
 こういうときは得てしてインプット系は比較的元気で、ベッドにごろごろ転がって、さんざん積読していた本を文字通り手当たり次第に読んでたりする。正しい病人のあり方ですね。今なら人生でこの歳まで往生際悪く敬遠してきた文学史上の名作『源氏物語』でも『失われた時を求めて』でも、そこらへんに積んであれば読破できそうな勢いです。内容はすぐさま、きれいさっぱり忘れそうですが。
 ……与太話はこれくらいにして、大人しくうどんでも食って寝ます。

 ハリー・ポッター、出ましたね。早く読みたいんですが、買いに行くのが億劫。妹が予約したと言ってたから、奴が読んだ後に借りるか……


■ 2002.10.23   軽々

 ついに腹を括ってマウスの裏蓋を開けたら……ローラーの地の色が見えないくらいにゴミがまつわりついてました。うげげ。ああもう嘘のように動きが軽いです。S字クランクに嵌った教習車みたいな動きしてたヤツが、空を飛ぶようです。こんなマウス使ってりゃ手も攣るて。

 『彼岸過迄』読了。
 うーん、筋らしい筋ってないようなんですが。
 しかし漱石先生も、意地糞が悪い。千金積んでも選べないのが生まれ。月を我が物にしても得られないのが江戸っ子の肩書き。江戸っ子じゃなくてもいい。都市になずんで生まれ育った人間が無意識に振りまく香気、いわく言い難い艶とか洗練とかいわれるもの、しかし当の本人たちには日常に埋没して特に得がたいものだという自覚もない特権。

 要するに敬太郎はもう少し調子外れの自由なものが欲しかったのである。けれども今日の彼は少なくとも想像の上に於て平生の彼とは違っていた。彼は徳川時代の湿っぽい空気が未だに漂っている黒い蔵造の立ち並ぶ裏通に、親譲りの家を構えて、敬ちゃん御遊びなという友達を相手に、泥棒ごっこや大将ごっこをして成長したかった。月に一遍ずつ蠣殻町の水天宮様と深川の不動様へ御参りをして、護摩でも上げたかった。(現に須永は母の御供をしてこういう旧弊な真似を当り前の如く遣っている。)それから鉄無地の羽織でも着ながら、歌舞伎を当世に崩して往来へ流した匂いのする町内を恍惚と歩きたかった。そうして習慣に縛られた、且習慣を飛び超えた艶めかしい葛藤でも其所に見出したかった。(『彼岸過迄』夏目漱石)

 それに憧れる田舎者の心理をよく知り尽くして、その癖自分も江戸っ子だなんて。なんたる根性の悪さ。


■ 2002.10.20   混乱

 『彼岸過迄』と『岡本綺堂短編集』と『どくとるマンボウ交遊録』を並列処理で読むのは、さすがに無理がありました。青蛙堂が須永になったり、千代子が佐藤愛子になったり、敬太郎が関口先生になったり、田口と松本がどっちがどっちかわからなくなった挙句、須永が中禅寺に見えてきたりしてます。京極堂シリーズも混じっているのは、『魍魎の函』をさらに再読しているから。枕元の本と机の周りに積んである本と、さらに鞄の中にもそれぞれ入っている本に中途半端に手をつけた結果の混迷です。節操がない。そして、どれも読み終わらない……


■ 2002.10.17   順序が逆

 ドリップ用のコーヒー豆を貰ったので、カリタのドリッパーを買いました。ほんとは不精者向きにコーヒーメーカーがよかったんですが、置く場所と財源の問題でドリッパーに。1〜2人用、600円。安い。ついでに専用フィルタも買って、デカンタを買うのを忘れて、仕方なくカップに直接ドリッパーを載せてドリップという荒業で、毎朝のコーヒーをいれてます。まあ1人分ならこれでもいいかと思ったりもするのですが(本当にいいのかどうかは不明)、問題は味がインスタントとあんまり変わらない気がするのは腕が悪いのか、豆が悪いのか。とりあえず、豆疑惑を解消するために、今度良さげな豆買ってこようと思います。

 今夜はお粥。水炊き用の骨付き鶏を1、2個入れて炊くとおいしい。


■ 2002.10.14   鼻が

 風邪は腹から鼻に移動したらしく、鼻水が止まりません。
 なんだか最近、身も蓋も無い日記が続くなあ……。まあ、ここで何を飾っても仕方ないんですが。

 風邪引きのときの通例で、汁物づいています。昨日は豚汁。今日はトマトベースのスープスパ。
 そういえば、こちらに引っ越してきてから、豚汁を「ぶたじる」と発音したところ、大笑いされたことがあって、いまだに根深いトラウマになってます。「とんじる」なんだそうです。そっちのほうがヘンじゃん!(ムキになるほどでも……いえ、トラウマなので…)
 この調子では、「ぶたまん」も盛大な失笑を買いそうなんですが、こちらでは「肉まん」しか見かけない。肉まんでは、何の肉が入っているかわかるまい。豚なら豚とはっきり言ったほうがいいではないか。(だから、ムキにならんでも…)
 ちなみに、コンビニで買うとき、辛子をつけてくれないところも、私としては納得しがたい。
 ………と、風邪引いて押さえが効かなくなるや、急に我儘言い出す似非関西人。


■ 2002.10.10   腹が

 痛い。

 胃腸の痛みは、痛くなるとほんとにのた打ち回るほどに痛いけれども、治るときはけろりと治ってしまう。昨日の夜中からどうにも差し込むように腹が痛くて、ごろごろと寝返りを打ちながら、いつの間にか気を失うように寝ていて、次にはまた痛みで目が覚めた。
 会社に行くのをどうしようか迷っているうちに、すっきりしないまま一応は収まってきて、ぶり返したら嫌だなあと思いながらも、休む決心はつかずに、寝不足と胃腸のどんより感を抱えて遅刻ぎりぎりに会社に滑り込む。
 よれよれとチームのメンバーに挨拶。
「なんか今日は腹痛いんですよ」
「何かヘンなもの、食いました?」

 待て待て、その開口一番は何。
 確かに彼女とは、食べ物の話ばかりしている。しかも、二人してチャレンジャブルな食物系爆弾処理班。仕事上の接点以上に、趣味とか嗜好ではなく、賞味期限が切れた豆腐はいつまで生食に耐えるかとか、でも納豆に賞味期限表示があるのはどうよとか、そんな話題で意気投合してしまった私たちはどうなのか。ちなみに、パンをかじってみて、ふと裏返したら一面に黴が生えていたという血も凍る体験をしたのは私だが、賞味期限が一週間以上切れた豆腐をキムチ炒めしてまで果敢に挑戦したのは彼女である。いや、キムチなんて味が濃いもの選んだのは無意識の欺瞞ですな。今の時期、まだおでんの鍋を一日部屋に出しっぱなしにしておくと痛むと彼女は言うが、私は平気だと思う。彼女に言わせれば「気づいてないだけでは?」………

 あやや、さらに腹が痛くなりそうな話題をごめんなさい。
 こんな二人なんだが、二人とも不思議に食中りしたことはないんです。
 今回も、本当に何も危ない橋を渡っていないし。私は胃痛が持病だし、彼女も胃腸が弱いほうだというけれど。私なぞ小学校の修学旅行でクラスの大半が中ったときにも、一人でけろりとしていたのだ。
 とりあえず腹の痛みは治まったけど、今度は頭が痛いし、なんだか寒いから、きっと風邪なんだと思う。ああ、風邪の季節。


■ 2002.10.6   出不精、買い物に行く

 ここ最近のスタバ攻勢はすごい。横浜駅構内にまででかい店が出来ていて、ドトール派の私としては心中穏やかでない。店内が小綺麗で、グッズに洒落たものが多いのにはブランド戦略として感心するが、肝心のコーヒーと食べ物の味が私は気に入らないのだ。なんか、スターバックスラテのミルクって、濃くありません? その点、素直に「牛乳入ってます」なドトールのラテの方が好き。というわけで、いつも私は女性比率が異常に高い満員のスタバを素通りして、ねずみ色のスーツ比率の高いドトールに流れてしまうのです。安いしね。こういう勤め人にやさしい店に頑張ってもらわんと。

 ところで、話は全然違いますが、私はひそかに、ガマ口コレクターです。いや、コレクターというほどのコレクションではないんですが、とりあえずガマ口の財布なんかを見かけると、素通りできません。お土産やさんの定番グッズですが、この誘惑に勝てずに、あちこち行くたびにガマ口の小銭入れが増えます。その割りに、鍵入れや薬入れなどに普段使いもするし、普段使いすれば無くしもするので、正確にどれくらい持っているかは把握してないんですが。自分の財布を買うときも、ガマ口でないと買いません。あの単純で、かつ堅牢な仕組みを考え出した人って、すごいと思います。
 今日もデパートの食器売場を冷やかしていたら、和風の小物を扱っているコーナーがあって、そこで一目惚れして買ってきてしまいました。草木染め、手織りの唐桟縞のガマ口。小銭入れにするにはちょっと小さいし、かっちり堅い作りなので、薬や印鑑入れに良さそう。唐桟縞って、千葉県の無形文化財だったことを、添えてあった説明書きで知りました。草木染めの淡い色合いが美しい。
 ほくほくとご機嫌で帰ったんですが、よく考えたら今日は親戚の結婚祝いの品物を見に行ったんであって、自分の買い物で嬉しがっていてはいけなかったんでした。あーあ、また来週も行かなきゃ。(で、また関係ないもの買ってきそう…)


■ 2002.10.2   岡を越えて

 またしてもどこのページからも浮き上がった壁紙を選んでしまった……という反省は少なくとも一日くらい経って冷静になってからしかできません。「これって最悪ー」と思いながら服を選ぶ人間はいないのだ。岡目八目。いいさいいさ、ここは異次元空間だもの。しかし、岡目八目の「おかめ」を、「おかめとひょっとこ」の「おかめ」だとつい最近まで思い込んでいたのは内緒。


■ 2002.10.1   天変地異の威力

 今日は台風が来るというので、早く帰れた。いつもは17時を過ぎても誰一人席を立たず、当然のように椅子に根の生えた職場の面々が、電車が止まるからとか川が増水するからとか、妙に言い訳がましい挨拶を残して、いそいそどこか浮かれた空気を漂わせながら、一人また一人帰っていく。いざとなったらこれほどに簡単に切れる仕事なら、普段からそんな遅くまで残る必要ないんじゃん、と思いながらも、自分も「明日でいいや〜」と諸々を簡単に先送りして帰ってきた。キギョウのケイザイカツドウはソウゴにフクザツにエイキョウしあっている。らしい。が、そう、風が吹いたら桶屋が儲かる以上にどこにどういう効果をもたらすのか実は誰にも定かにはわからない以上、今日やろうと明日やろうと日本経済には蚊が刺したほどの影響があるとは思えないし、何がどうでも台風が来るときは来るだろう、世界が終るときは終るだろう。そういうことは、普段は忘れている。そういうことには、天変地異が来たときにしか気づかない。台風が、毎日でも来るといい。






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