2003年9月の不定期日記 
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不定期日記



■ 2003.9.30    人はヴァイオリンのみに生きるにあらず

 『誰がヴァイオリンを殺したか』(石井宏 新潮社)読了。
 ここでの被害者は、音楽性豊かな奏者による人の心をとろかすようなまろやかなヴァイオリンの音。

 筆者は大音量が鳴るように改造された楽器を音楽性の枯渇した弾き手が演奏する今日を憂いて、古きよき古典の時代に思いを馳せているようですが、気持ちはわからないでもないが100年も経てば時代も人の好みも変化するのだから、楽器や奏法のトレンド、音質の変化は致し方ないのではと思います。流行は回帰するにしても。それに、モーツアルトの時代の演奏を忠実に再現して、それが現代の聴衆に受け入れられるかと言えば、そうでもないんじゃないかと私個人的には思います。

 それに、無条件に古い時代を称揚するのもどうですか。18世紀。あの時代の音楽家や楽団は現代の家庭のCDコンポ同様だし、モーツアルトの音楽は貴族の家のルームミュージックですよ。ま、それを今コンサートでありがたがっている我々はどうなんだって話はさておき、もともとそんなに目くじら立てる種類のものでもなければ、逆に手放しで賛美するようなものでもないのでは。エレガントさということに関しては、かの時代の人々のほうが敏感だったとは思いますが。

 読み物としては、大変面白く読めました。クレモナの楽器の価値をめぐるお話は、ヴァイオリンに限らず、これから楽器を買おうという人には参考になると思います。所詮楽器なんてどんな楽器でも自分の音以外は出てこないんだから、自分の満足した楽器を(どんな基準でもいいと思います。音が好きとか形が好きとか扱いやすいとか。骨董品的価値が好きならそれも結構)買えばいいと思います。

 いずれにせよ、ヴァイオリンという楽器は憧れはしますが、私の趣味には音域が高すぎて、強固な執着の対象にはなりえません。私が好きなのは野太くて低い音なのでね。コントラバスのG線なんか、もう最高。


■ 2003.9.28    和太鼓の音とサンバのリズム

 が全編を彩る映画でした。『座頭市』。
 あの音楽の使い方はとても面白い。鋤を土に打ち付ける音や、田んぼを踏みしだく音が、効果音を呑んだり効果音に呑まれたりして、映画を次第にクライマックスにドライブしていくのは新鮮でした。

 そんなことより、浅野忠信! ビバ浅野忠信!!!(出た本性が)

 北野映画を劇場で見たのは実は初めてなんですが、豪華なキャストでした。もう日本映画って言ったら、浅野さんに岸部一徳に柄本明だと思いませんか。そうですか。私だけですか。北野武は役者としてはあまり評価しませんが(何せ彼は何をやっても、あまりにもたけしなんですもん。しぐさとか、言い回しとか。キャラが変わらないんですね)、今回あんまり浮いて見えなかったのは、周りが同等に存在感のある人たちだったせいなのかも。映画自体は、映像やディティールが丁寧な美しい作品でした。

 惜しむらくは2列ほど前に座っていた、上映中に思いっきり話し声を立てていたおっさんの存在。あんまさん、ここ、ここにいる微悪も斬り捨ててくれい! とかなり切実に思いましたさ。

<備忘録>
 ひさびさに図書館に行ったら、本の探し方のコツを忘れ果てていた。
『奏迷宮』(司修 河出書房新社) 
→なんとなく借りてみたけどどうも合わないので読まずに返すと思う。
『裏ヴァージョン』(松浦理英子 筑摩書房)
→ぱらぱら捲って構造がわかってしまったので、最初のほうは思いっきり飛ばし読み。何が恥ずかしいって、40にもなった女同士の、女子高時代の交換日記みたいな文体が。(きっとこれも確信犯なんだろうけど)4割がた飛ばしつつも読了。(9/27)


■ 2003.9.25    皮膚感覚

 津原泰水の小説を読んでいて何となく感覚が女性的……というのは不正確だな。どちらかといえば、男性っぽくない……と思うのは、彼の文章の触感が生々しいからだろうと思う。読んでいて、作中の人物の皮膚感覚がわかるのだ。その不快なんだか居心地がいいのかわからない湿度がやめられないのか。『妖都』を一気読みしました。不気味なのに快感だなんて、たちが悪い。

 他の著作も読みたいんですが、なかなか書店には置いていないよう。でも注文しようにも、『ペニス』なんて、いくら面の皮の厚い私でも書店で口に出せるもんじゃない。なんちゅう書名をつけるんだか。この人、絶対に確信犯だよな……

 無垢なエレンディラは、その白鯨に似た婆さんに比べればしようもない女でした。『失われた時の海』が一番好きです。抑揚もなくしかし安定もせずまろびつつ続く道程に楔を打て。さもなくばバラの香りのなかに別天地を見よ。

<備忘録>
『エレンディラ』(ガルシア・マルケス/鼓直・木村榮一訳 ちくま文庫)読了。(9/25)
『妖都』(津原泰水 講談社文庫)読了。(9/24)


■ 2003.9.23    昨日の

 日記を書いてUPしないまま寝てしまったようです。というのも記憶が定かにないからなんですが、きちんとPCは落ちてて、ちゃんとパジャマにも着替えてました。酔っ払いは何するかわかりませんねー。

 『ゲロッパ』を見てきました。
 最高! 最高! 面白かったです。西田敏行のあの役作りはつくづくプロだと思います。岸辺一徳が好きなので、彼のソウルダンスを見られただけで私的にはオールオッケーなのでした。今日行った映画館は初めてだったんですが、横浜高島屋の向かいの地下にあるむちゃくちゃ小さな劇場。(って書くとわかる人にはわかりますね…)降りる階段の踊り場に人が一人しか入らないようなチケット売場があって、客席が200もなさそうな。スクリーンの大きさなんか、最近出来たシネプレックスの半分くらいなんじゃないかっていうような。今時あんなところがあったとは。風情があっていいですが、狭いだけに前に座高が高い人に座られると一撃でしょうなあ。

 その後、TOWER RECORDSで大試聴大会。西本智実&ボリショイ響の『ボレロ』はさすがにロシアのオケで管は上手いんですが、バランス的に弦が弱いような。録音のせいかしらん。でも『禿山の一夜』もいまいち暴れっぷりがよくないので、今回は見送り。ヒラリー・ハーンのバッハのヴァイオリン・コンチェルトはなかなかよかったです。古典って意外とああいうスピーディーでトンガった音色が合うよう。でも前に買ったメンデルスゾーンとショスタコーヴィチのコンチェルトをまだ聴いてないので、これも見送り。バーンスタイン&NYフィルのショスタコーヴィチの交響曲5番は、日本公演の時のライブ盤。別のCDを持っているけど、ついつい聞いてしまった。前にうちのオケでやったときに、「思いっきり野蛮に吹いて」と言われた2楽章のファゴットソロは、なるほどすごい音でした。割れてるんじゃないか。でも2楽章冒頭のベースユニゾンなんかもっと凄い。音域が低すぎてもう録音が振動しか拾ってない感じ。最高!<低音馬鹿

 今回の見っけもんは、ネルソン・フレイレのシューマンピアノ小品集。『謝肉祭』『パピヨン』『子供の情景』『アラベスク』と揃ったお買い得盤。決め手は、『謝肉祭』の全体のテンポ感が自分と比較的合うところ。ときどき「ちょっといま誤魔化した?」と思うときがありますが、出して欲しいところでフルスピードが出て、フォルテッシモが鳴るなら良しです。『子供の情景』は昔ピアノでちょこっとやりましたが、あらためてこういう曲なんだと再認識しました。下手糞だと何が何だかわからない曲になるのですよ、シューマンの曲は。何せ下手だったのでね。あははー…


■ 2003.9.22    思い立って

 覚書き日記。

 今日も服装失敗くん。寒いっちゅうに!<逆ギレ

 ガス代を払いました。滞納してごめんなさい。
 この極道な支払い状態を改善するためにも、早く引き落とし手続きをせねば。

 飲みに行きました。浦霞と上善1合ずつとその他もろもろ。弱くなりました。今日はこれにて終了。


■ 2003.9.21    特筆

 すべきことは何もないんだが、特筆しなくていいことでも覚書的に書いておくのが日記の本来の使用方法じゃあなかったっけ。ということで、箇条書き。

11時起床。朝から雨。昨日は震度3の地震。寒い。明日は気温20℃だそうだ。

台風は関東を逸れるらしい。どうせなら直撃して通勤電車を止めるくらいしてほしい。

オケの練習に行く。雨のせいか人が少ない。必然的に音が薄く、これまで自分でもよく聞こえていなかった自パートが丸聞こえになる。痛い。自業自得なんだが。練習せねば。

財布を開けたら687円しか入っていなかった。でも寒くてたまらずドトールでホットココア。残金447円。

鞄の中には読みかけの『エレンディラ』が入っているけど、今日は1ページも進まず。

帰ってきて洗濯。最近の洗濯機は蓋を閉めないと動かないのが気に入らない。洗濯機の水がぐるぐる回っている様子を眺めるのが好きだったのに。

今日、胃に入れたもの。ブランチにチーズ蒸しパンとコーヒー(ブラック)、おやつに杏仁豆腐、晩はご飯と漬物。なんか胃がもたれておかずを食べる気がしない。

……うーん、この食生活、いや生活そのものが、まずいかしらん。いろいろと。


■ 2003.9.18    新幹線に乗って

 帰ってきました。あ、や、15日のことですが。
 東北は良かったです〜〜〜。
 涼しいと言うよりは寒くて、いきなり初日の仙台からずっとジャンパー着用でしたが。ちょっと曇り小雨気味でしたが。旅行日記でも書こうかと思いましたが、根気がないのでハイライトのみ。

<コース>
仙台(ここまでは常磐線特急)−塩釜−松島−一関−平泉−遠野−盛岡−弘前−角館(で新幹線で帰る)
泊まっただけとか、下車して時間つぶしにうろうろしただけというのは一応除きます。

<今回の遭難ポイント>
松島 松島海岸駅−松島駅間
徒歩(馬鹿)で踏破。遠い。遠すぎる。
標識ないし地図の縮尺ウソだし人気ないしもう辿り着けるか心臓バクバクもんでした。
【教訓】観光地図の縮尺を信じるなかれ。

平泉 毛越寺−中尊寺間 ウォーキングトレイル
ウォーキングっつーか、登山でした。装備なし(馬鹿)で踏破。
気づいたら山ひとつ越えていた。ムキになって上り坂を歩いていたら、平泉町がはるばる見渡せてましたから。
おまけに標識ないし地図の縮尺ウソだし人気ないし以下同文。
引き返そうにも時すでにかなりの距離を稼いでしまっていた(踏ん切り悪い。というか気づくの遅い)やけくそ感と、照りつける陽気(この日ばかりは気持ち良く快晴)と、半端じゃない勾配に途中からランナーズハイ状態。中尊寺に辿り着いたときには、あまりの達成感に寺を見ずに帰りたくなりました。
【教訓】等高線の書かれていない地図の緑色には要注意。

角館
最終の東京行き「こまち」発車10分前に駅に到着。
そうしたら、みどりの窓口は1つしかなく、3、4人の列ができてました。
2人分は待ったものの、直前に並んでいた人が周遊きっぷ購入の長考に突入したため、拝み倒して先に切符を買わせていただきました。その節は本当に申し訳ありませんでした。
【教訓】土地鑑のない場所では30分前行動。

 いや、本当によかったんですよう、東北。でも印象強いのは、やっぱり行き倒れかけたケースなわけで。

 そうこうしているうちに、阪神が優勝しているではないか。おめでとうございます!
 私は阪神ファンというより星野ファンなので嬉しい。やっぱり道頓堀は飛び込みの嵐だったようですね。
 ところで大阪の人って、水に飛び込むの好きなんでしょうか。学生時代にも、劇団のオーディションに受かって琵琶湖に飛び込んだ奴を知ってますし、所属していたブラバンでも、定演がはねたら指揮者をホールの目の前の噴水に皆で放り込むのが慣例でしたし。

 ところで、8月の最後の日記を間違って消してしまったようなんですが、書いた内容が正確に思い出せないので復旧を諦めました。オケの練習のこととか書きましたっけ。なんかボケボケでだめですねえ、最近。


■ 2003.9.6    各駅停車に乗って

 東北に行こうと思いましたが、時刻表を見ると冗談ではなく行き倒れそうだったので、せめて仙台までは特急を使おうと思います。東北には三陸リアス鉄道もあるし、いわて銀河鉄道もあるし秋田内陸縦貫鉄道もあるし、ローカル線マニアにはたまりません。あ、マニアと言っても、写真は撮りません。電車に乗るのが好きなだけです。移動時間で1日が潰れるのは全然平気です。そもそも私の場合、旅行は移動することに意義があるのです。
 おしくも青春18きっぷは使用期間が終わりかけでお得にならないので、地道に切符買ってちんたら移動しようと思います。東京方面発の東北のフリー切符ってないんですよね。北海道発ならあるんですが。ちょっと札幌経由で行こうかなんて、本末転倒なことまで考えましたが。

 ……浮つきすぎて順番を間違えました。やっと夏休みが取れたので、旅に出ます。チェックポイントは、仙台のペディトリアンデッキ、遠野の河童、秋田内陸縦貫鉄道。秋田まで行って、どうやって帰ってくるかは未定です。というか、どうやったら帰ってこられるのかよくわかっていません。西日本はそこそこ土地鑑があるんですが、東北はほとんど行ったことがなくて、さっぱり疎いのです。まあいつものとおりの無計画旅行ですが、時刻表だけは買いました。学生時代に紀伊半島を一周するはずが、駅の時刻表を見間違えて途中で電車がなくなり、駅員室で寝た前科があるのです。駅のおっちゃんが気の毒がって「ワシらもう帰るけど、寝てていいから」と泊めてくれたのでした。いい人でした。もうさすがにああいう荒業は回避しないとですね。<というか大迷惑です…

 そーゆーわけで、ちょっくら行方を晦ましてまいります。便りがないのは達者なしるし。

<備忘録>
『異邦人』(カミュ/窪田 啓作・訳 新潮文庫)読了。(9/1)
『残侠』(浅田次郎 集英社文庫)読了。(9/4)







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