2005年4月の不定期日記 戻る 
不定期日記

■ 2005.4.30   乾燥パセリ

 洋食における乾燥パセリの位置づけは、和食における青海苔と同じような気がする。つまり焼き物とパスタにしか合わない。焼き物をほとんど作らない我が家で減らないのは当たり前だ。もう三年越しくらいか、これ。仕方ないので、パスタを作ったときにはここぞをばかりに表面が青くなるくらいに振りかけてます。見た目もそっくりだなあ。今日は茄子と小松菜のトマトパスタ。私はパスタは焼きそばと同じと思っているので、冷蔵庫にあったものはなんでも投入されます。

 さて、連休は私はどこにも行きません。月曜と金曜が休みじゃないので半端だし、何より先週、先々週とさぼり続けていい加減仕事も溜まっているし(午前中に起きられたら出勤しようかと思っているくらい)、自分の用事も溜まっている(家族旅行の手配なんて面倒くさいー)。今年は地道にすべきことをやっつけようと思います。とりあえず目標は衣替えの完遂とこたつを片すこと。<すでに目標値が低い。

 ハーゲンダッツのマンゴー&ココナッツは美味い。最近、アイスの新作追っかけになってるな。


■ 2005.4.28   遊び倒してたら

 体調治ってきた。<荒療治

 ちょっと溜めてしまったので箇条書き。

 都響のコンサートに行ってきました。(4/27)
 不明にして知らなかったのですが、都響って演奏会のプログラムの選曲がすごくいい。プロオケの演奏会っていうとなんだかモズとかベトとかチャイとか、はたまたブルックナーとかマーラーとか定番な選曲ばっかりでなんだかなあと思っていたんですが、都響は面白い。選曲がアグレッシブです。バーバープロとかストラヴィンスキープロとか、ロシア物特集をやってもグリンカとか取り上げる渋さ。プログラム代わりに月刊都響がもらえて(勿論無料)、これにかなり丁寧な曲目紹介が載っていて詳しくない人にも親切な造り。演奏会スケジュールなんかも全部載っている。チケットもリーズナブル。本当に音楽好きな人を増やそうという気概を感じます。実はこれまで国内オケってあまり興味なかったんですが(どうしても実力はちょっと見劣りする)、通い詰めるならこういう地元のオケで珍しい演目を聞いたほうがずっと良いと思い直しました。今回誘ってくださった方がまさに月に3、4回のペースで通い詰めている猛者。若杉ファンで演奏会には必ずお花を持って行くんだそうだ。普段のお昼ご飯とか徹底的に節約して自分の好きなものに思い切り良く散財する姿は究極の遊び人だと思う。ひそかに師匠と仰ぐことにしました。

 というわけで、今回の演目は、ブラームス『大学祝典序曲』男性合唱付き、シェーンベルク『ワルシャワの生き残り』語り・合唱付き、ブラームス(シェーンベルク編)『ピアノ四重奏曲第1番』。……変態的なプログラムだ(笑) これが定演なんだからすごいよ。絶対にCDなんか買いっこないこういうのこそ生で聴いたほうがいい。そう、それに若杉確かに格好良いですね!(もういいお歳ですけど)

 人生初ビリヤード。(4/28)
 前々から興味はあったんですが、なかなか一人では行きづらいプール。でも男性陣は結構やったことある人が多い。7人いて女2人で初心者がその女2人だけでした。ナインボールをやってから、名前はわからないんだけど、15の玉の持ち球を決めて相手の玉を落としていくゲームをやりました。縁に近いボールは撃ちやすいけど、半端に遠い玉は左手が定まらなくてヘロヘロです。難しいけど面白い。ボーリングなんかより(あれは玉の重さだけでげんなりする)ずっと好きだな。もっと練習したい。職場にビリヤード部が結成されるやも(笑)

 あー仕事も溜めちゃったよ。


■ 2005.4.26   美味い

 ワインを気を使わなくて良い友人と二人で一本開け、ほろ酔い加減で家の一つ先の駅で電車を降りて郵便局に書留を取りに行き、そのまま一駅歩いて帰ってきました。深夜一人で人気のない道を歩くの好きです。さすがにしょっちゅうはやらないけど、今日は月も出ているし、寒すぎもしないひんやりしたちょうどいい気温。なんとも言えない開放感です。だけど深夜に一人で妙に上機嫌な女の応対をさせられた郵便局の職員さんは不気味だったらしく、書留を渡してくれるなり窓口の戸を閉めてしまった。普通立場が逆でないかい。


■ 2005.4.25   両隣

 がどうやら引っ越して空き部屋になったようで、水を得たかのように音楽かけまくってます。チャイコフスキーにショスタコーヴィチにプロコフィエフ。ここぞとばかりに大音量系ばかり。私のクラシック空白地帯はマーラーとブルックナーなんですが、どっちも途中で意識を飛ばして最後まで聴けないというのが敗因。でも今の環境なら強制的に起こされるような大音量で聴けるからトライしてみようかな。

 風邪もいい加減長いこと引きずっているんですが、呼吸器系だけが治らない。鼻水の次は咽喉に来ました。声が出ない。

 『敵は海賊・猫たちの饗宴』 神林長平(ハヤカワ文庫)読了。
 私アプロが好きなんですけど、それは近くにこんなキャラがいてほしいというわけじゃ勿論なくて、実害が及ばない遠くから眺めて遊ぶ分には抱腹絶倒モンに面白いし飽きないだろうなあ、という意味の「好き」です。どっちかというと、実際にいて欲しいのはラジェンドラ。一隻いれば衣食住に困らないね。文句を言いつつ、仕事なんかも全部代わりにやってくれそう。キレたラジェンドラはいい味出してます。


■ 2005.4.22   梅酒

 貰いました。美味い。けど思ったより甘いからロックよりソーダ割りにでもしたほうが良かったかも。

 どうも風邪が治りきってなかったようで。鼻水が止まりません。そんな状態なのに今週は遊びすぎて仕事を溜めてしまった。連休前なのにやばいよう。

 『敵は海賊・海賊版』 神林長平(ハヤカワ文庫)読了。
 どうして食わず嫌いしていたのかわからないほど面白く読めたんですが、ときどきあの独特の切れのいい短いセンテンスの連続が、脚本のト書きを読んでいる気分になるときがある。でもこの文章の飛躍がいいんだよね。

「どろぼう!」
「それは税務署に言え」

 むしろ今は社会保険庁に言うべきだな。


■ 2005.4.21   シェイクスピア

 『あらし』 シェイクスピア/豊田実 訳(岩波文庫)(4/19)
 ちょっと前に読み終わったんだけど、鞄の中に入れっぱなしで。

 君は虞れ驚いて、興奮しているように
 見えるが;はれやかな気持ちでいてくれたまえ、
 余興は済んだのです;あの俳優たちは、
 (わしがかねて話しておいた通り)みな精霊で、
 大気の中へ消えたのです、
 この幻にも似た仮空の物象のように
 摩天の塔も、華麗な宮殿も、
 荘厳な伽藍もこの大地すらも、
 否、この地を占むる凡ての物も必定溶け去って、
 いま消えたまぼろしのように
 跡形もなくなるでしょう;人生の内容は
 夢さながら、われわれの短い一生は
 眠りでけりがつくのです。

 どの部分がどうとも言えないんですが、じんと来ます。この話。エアリアルとプロスペローの関係がなんだかすごく切ない。エアリアルはプロスペローを愛してますよね。嵐を起こすプロスペローにも、ナポリ王の家来の策略にも、キャリバンの陰謀にも、プロスペローの手足になって働きながら悲しんでいる感じがする。プロスペローから解放されたいと口では言いつつ、いざ自由の身になってもプロスペローから離れがたそう。エアリアル役は昔、女性が演じたんじゃないのかなあ。台詞の雰囲気なんかからそう思ったんですけど、どうも映画とか現代の演劇では男性が演じていることが多いみたいですね。福田恒存の解説が読みたくて新潮文庫版も買ってしまった。音楽CDじゃあるまいし、訳者で本を重複買いするなんてもう末期症状。


■ 2005.4.18   ショスタコーヴィチ

 のことを調べていて見つけたロシア歴史人物占い
 早速やってみましたが……うーん、不本意だ。

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あなたはレーニンです。

ウラジーミル・レーニン(ウリヤノフ) 1870-1924

ロシア革命の指導者。皇帝暗殺計画に参加した兄アレクサンドルの刑死後、自らも革命運動に参加する。ロシア社会民主労働党の設立に関わるが、方法論の違いにより分裂、ボリシェヴィキ派のリーダーとして活動。1907年から亡命生活を送り、1917年の2月革命後にロシアへ帰国、10月革命を成功させて権力を握る。革命後は内戦と干渉戦争に勝ち抜き、誕生したばかりの革命政権を安定化させた。ソヴィエト連邦の生みの親であり、その長所と短所いずれに対しても大きな責任を持つ人物。

レーニンは生きている。というわけで、あなたの業績は不滅です。もしかすると、肉体的にだって不滅かも(永久保存されるから)。理論と組織の才においては並ぶ者なし。若い頃はいろいろと苦労しますが、その甲斐あってどでかいことを成し遂げます。事を起こすにあたっては、装甲車の上で演説するといいことがあるかもしれません。仕事に打ち込み過ぎる傾向があり、激務で健康を害さないように注意して下さい。遺言状は早めに公開しておくと周りの人が迷惑しないですみます。

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 よりによってボリシェヴィキか。装甲車の上で演説なんて今の日本でできたら夢みたいですよ! いやそれより、チャイコフスキーとかラフマニノフとかストラヴィンスキーとかショスタコーヴィチとか、そういう選択肢はないんでしょうか。私は革命よりも音楽と愛に生きたいね。

 と言っても、この中のどの人を取ってみても、辛そうな人生には変わりはないんだけど。とくにチャイさんとタコさんは。


■ 2005.4.15   甘納豆が

 こんなに辛口のシャンパンと合うなんて! 新発見だ。いや昨日のシェリー開けようかと思ったんですけど、冷蔵庫を見たら忘れかけていたいただきものシャンパンがあったので生ものを優先した次第。んでつまみになりそうなものを物色したら北海道土産(賞味期限ぎりぎり)の甘納豆があったというわけ。キスチョコ摘む感覚ですね。チョコよりカロリー低いのが素晴らしい。

 ところでほんのり咽喉が痛くて間違いなく風邪の前兆だと思うんだが、酒飲んだあとに風邪薬飲んでいいんだっけか。風邪気味なら飲むなと言われそうだけど、これもまあアルコール消毒だと思えば。


■ 2005.4.14   もう体裁は

 取り繕わないことにしたので爽やかに酒の話。思えば安い酒ばかり飲んできたもので、気づいたらそこそこ味がわかると言えるのは日本酒と焼酎とジンくらいだということにちょっとショックを覚えまして。ウォッカも一時期飲んだけど味の違いがわかるほどじゃない。ワインはまだ白しか飲めないお子様な上、いくら飲んでも「美味い」(=好き)か「不味い」(=嫌い)かしか判別がつかない。最近になってやっと美味いビールというものが存在することを知った体たらく。しかし見事に安上がりなラインナップだ。日本酒は決して安くはないけど、どんなに高くても一升瓶が概ね一万円以内で買える(それだって東京とかネット上とかの話で、地元で買えばニ三千円がほとんど。でなきゃ地元民が暴れるよ)ことを考えると、やっぱりリーズナブルな酒という気がする。口に入れるもので、酒ほど値段と味が綺麗に正比例するものはないと思う。圧倒的に高いのはやっぱり洋酒だ。だからこそ未開の地なわけだ。しかしこのままウイスキーもブランデーもグラッパもシェリーも知らないままでは大いに悔いが残りそうだ。いや残る。残るに決まってる。第一あんなに二日酔いになってまで一体何を飲んでたんだ私は。……という思いが、どうもやっぱりビールじゃ燃費が悪いというのでスピリッツでも仕入れるかと出向いた成城石井でシェリーが特売になっているのを見た瞬間走馬灯(え?)のように頭を過ぎりまして、一念発起買ってみました。一念発起して結局特売かお前。買ったのはTio Pepeというやつ。産地の表示が見当たらないがシェリーというからにはスペイン産なのであろうな。ワインより日持ちするらしいので(どうもワインは開けると早く飲みきらないとという強迫観念に囚われていけません)ちびちび飲めそうで良さげ。週末に開けてみよっと。

 『でも私は幽霊が怖い』 佐藤亜紀(四谷ラウンド)読了。
 ひさびさに過激なエッセイというのを読んだ気がする。中野好夫以来? 一般にエッセイはみんな書き流すからなあ。でもそこでどれだけ受け(まあ衝撃とかインパクトとか言ってもいい)を取れるかに全力投球する人が私は好きです。


■ 2005.4.13   Netscape

 ver4.7のインストーラをPC移行のどさくさになくしてしまったようです。というわけで、今Netscapeでの表示確認が出来てません。すんごい面白いことになってたらどうしよう。もしそうだったらBBSかメールにでも一行、ココのページがヘンだ、と通報をお願いします。ver4.7なんて今や古色蒼然もいいとこなんですが、スタイルシート解釈の融通が利かないところを(ときどきあからさまにおかしいときもあったけど)ちょうどスタイルシート非対応ブラウザへのガイドライン代わりにしてたんですけど。もう4.7なんて手に入らないだろうなー。今の最新版てバージョンいくつなんだろう。OperaとかFirefoxにしたほうがいいのかな。ソフト業界を離れて以来すっかり最新動向に疎い私。

 ああー禁を破ってバドワイザーの後に最後の道後ビールを飲んでしまった。だってバドワイザー薄いんだもんよー。最近飲みに行くメンバーが揃って筋金入りのビール好きで、しかもヨーロッパ産の濃厚だったりワインなみに度数が高かったりでもすごく美味しかったりするのを次から次へと教えてくれるから、昔じゃ考えられないくらいにビール党になってます。浅蜊とチンゲン菜のフォーの後、白アスパラ&マヨネーズを肴に。


■ 2005.4.12   喫茶店

 を転々として本読んでました。家に帰って布団に寝っ転がって読むとおやすみ3秒なので。

 というわけで、『架空の王国』 高野史緒(中央公論社)読了。
 フランス東部の小王国の王位継承にまつわるミステリー仕立てファンタジー。舞台仕立て、人物造形ともに魅力的、展開もスピーディー、ヨーロッパの歴史絡みもとても丁寧に詳細に書かれていて非常に面白いんですが、難点は視点人物の日本の女学生の感覚がちょっとおとめちっくなとこでしょうか。歴史学者と学生が主人公だけにストーリーにヨーロッパの歴史が深く絡むので当然キリスト教抜きになるはずもなく、ちょうどキリスト教ってすげえなあと思っていたタイミングだったので、そこらへんは大変興味深く読みました。ヨーロッパ人にとってキリスト教というのが単なる宗教ではなく、世界観そのものだという趣旨の一節があって、いろんなことがすごく腑に落ちました。キリスト教徒にとって、目の前の人物が自分と同じ神を信じないということが、即アイデンティティの崩壊に繋がり得ると考えるとちょっとは理解しやすい。自分の存在意義とか価値体系とか世界観とかそういうすべてのものが揺るがされるわけだから、そりゃ血で血を洗う戦争にもなるわけだ。ま、でもそんなネタを盛り込みつつ、お話としてはシンデレラストーリー(いや逆シンデレラストーリー?)というあたり、やっぱ日本人やねえと思ってしまいました。身も蓋もない感想で恐縮っす。


■ 2005.4.11   コートを

 仕舞った途端にめちゃめちゃ寒いではないか。

 本日のスープおみくじは黍と紅芋。ちょっと甘みのあるポテトポタージュって感じ。ここしばらく自炊が面倒くさくなる周期に入っているようで、毎日朝晩パンとスープというヨーロッパの貧乏下宿人みたいな食生活になっているんですが、せめてパンくらいは食べ応えがあるのにしようとベーカリーのプレーン系パンを買ってます。毎日帰り道に乗り換え駅にあるベーカリーで、その日の晩と翌朝の分を買って帰るという看板方式。プレーンなパンほど味の違いが歴然。

 ローマ教皇の後継者は誰になるのかなー。先日亡くなった教皇はキリスト教世界にはまったく疎い私にも非常にまともな人に思えたので(ということは保守派のひそかな反発は強そう)、反動でゴリゴリの保守な人になったら不安だなー。時勢が時勢だけに。教皇関連の昨今のこの騒ぎを見ていると、やっぱりキリスト教が世界の大半を動かしていると言って間違いはないんだなと改めて思いました。ダライ・ラマが亡くなったらここまでの騒ぎになるだろうか。個人的にはどの宗教もどこか胡散臭いし信仰ってのもぴんとこないんだけど、宗教の存在自体を軽視はできないってことですね。


■ 2005.4.10   起きたら

 14時。一日だらだらして過ごしてしまった。もったいな。

 本日のスープおみくじは人参スープ。これは結構いける。

 『ベニスに死す』観ました。
 まさに期待通りの映像美。なんでヴィスコンティの映画を観るかって、金に糸目をつけない絢爛豪華さを味わうためだ。なんというか、別世界が見られます。美少年タージオは勿論美少年で美しいんですが、美少年に魅入られた年老いた作曲家グスタフ・アッシェンバッハが愛と病に身を持ち崩していく様子が壮絶。病で弱りきったグスタフが正装して老いを隠す化粧までして浜辺まで少年を見に来る最後のシーンはほとんど残酷と言ってもいい。完全に白浮きした化粧はピエロみたいだし髪染めは汗で流れ落ちて、それが輝く青い海とタージオの美しさと対比されるのは無残としかいいようがない。全編にわたってマーラーの交響曲が使われているそうですが(私マーラーはさっぱり疎いので言われてはじめて「へーこれがそうなの」と思いました。映画のBGMだからいいけど、演奏会であの音楽聞かされたらきっと3分で爆睡)、イメージ的には『死の舞踏』だと思います。ところでこの映画、トーマス・マンの小説が原作だったとは知りませんでした。原作のモデルはグスタフ・マーラーなんだそうです。なるほどね。

 Ben Lee情報訂正。彼はオーストラリア人だった! 全然米語(しかも比較的綺麗な)に聞こえたけど?! 大変失礼しました。しかしこれまで聞いたことがあったオージーイングリッシュはイタリアを旅行したときに聞いたイタリア訛りの英語と同じくらい聞き取りづらかったんだが、あれは悉く例外だったのか。じゃジョン・ハワードの言うことはちょっとはわかるかな。


■ 2005.4.9   休肝日

 やっと……。なんで今週こんなに立て込んだろう。

 スープおみくじ。今日は金時芋スープ。……微妙。金時芋の甘さのなかに微妙に味噌味がするのがいけないんだと思う。健康志向にこだわるあまり味が二の次になるのはどうなんだ。

 『少年トレチア』 津原泰水(集英社文庫)読了。(4/7)
 津原泰水のホラー(これはホラーと言っていいと思うんだけど)では概ね既存の世界が崩壊する。その崩壊の仕方が実に容赦ないと思う。ここで言う世界には、文字通り自分たちが住む物理的世界も、社会の枠組みや規則性といった概念世界、作中人物の精神世界も含まれている。それがじわじわと腐食し、限界値に達して崩落するまでの様子が事細かに描かれる。心理描写や情景描写も容赦がない。人があえて目を背ける部分が目の前に突きつけられる。人の容貌も人の悪意も、修辞上のタブーを憎悪するかのように身も蓋もなく描かれている。これが津原泰水の小説が怖い理由だと思う。


■ 2005.4.6   好き嫌い

 とは別の次元の問題で、私は米語、特に西海岸の米語はほとんど聞き取れるんだけど、英国英語は半分も聞き取れないってことがわかりました。『時計仕掛けのオレンジ』を観てて、ほとんど聞き取れずにほぼ字幕依存状態だったんですが、そのあとBen LeeのCDをかけてたら、ほぼ全部聞き取れて唖然としたというわけ。訛りの問題だったとは。そういえば『MATRIX』を観たときは字幕と音声がほぼ半々のウエイトだったから(字幕と台詞を比較できる程度には聞き取れた)、単純に英国英語に耳が慣れてないってことなんだろうな。子供のときの言語の刷り込みってホントに強固だ。というわけで、私はジョージ・ブッシュやコンドリーザ・ライスの演説は大体何言ってるかわかるだろうけど、トニー・ブレアやジョン・ハワードはきっとさっぱりわかんないに違いない。

 ちなみにBen Leeは多分西海岸の人で(レコード会社もロスだ)、いかにもロスやバークレーの学生街にフラフラいそうなルックスと訛りです。無理にジャンルに当てはめるなら、アコースティック系ポップス……なんだろうな。それにしても白のTシャツとブルージーンズってカリフォルニアの制服なんではと思ってしまうよ。

 というわけで『時計仕掛けのオレンジ』を観たんだけど、言わんとすることはわかるけど、特別に映像に鮮烈な印象は残らなかったな。音楽の使い方は面白かった。まるで名曲喫茶。


■ 2005.4.5   よく考えたら

 SFに限らず愚民かも。ミステリもファンタジーも普通の純文学も、名作と呼ばれているのは悲惨なほど読んでないからなー…

 『ハサミ男』 殊能将之(講談社文庫)再読しました。
 いやあ呆れるほど細部を忘れてました。やっぱり文字世界のほうが硬質で切れ味が鋭い感じ。一概に映像と比較はできないんですが。まあでも映画も本も両方楽しめるっていう作品はなかなかないです。とにかく「わたし」と「医師」のやりとりが素晴らしく洒脱。下手をすると安易な引きこもり系心理劇に堕しかねない設定を、これだけの緊張感を持続させつつ、お涙頂戴にも流れず、淡々と、そこはかとない可笑しみさえたたえながら描いていく文章には脱帽。その上この人は筋金入りの引用魔なので、きっと読むたびに新たな発見がありそう。「ここもアレのパクリだったか!」っていう。とりあえず、今回は前回におそらく全く気に留めていなかったホームズネタと助六ネタとあしながおじさんネタくらいはわかりました(おそらく殊能ファンとしては最低レベル…)。しかし最近妙にチャンドラーをもじる人が多いような(舞城もそうだったし)。まあしかし、いやしくもミステリファンにチャンドラーが嫌いな人もそういないんでしょうし。ちなみに私の場合、そもそも一作も読んでいないという、好き嫌い以前の問題。

 ちなみに『ハサミ男』は行きの通勤と昼休みと、余勢を駆って帰りに図書館に寄って本を返したついでに閉館まで居座ってぶっとおしで読んできたんですが、そこでひさびさに『創竜伝13』なぞ見つけてしまって懐かしくて借りてきてしまった。帰りの電車であらかた流し読みしてしまったんですが、なんか終君、本格的に三枚目になってないか? 前よりアホっぷりに磨きがかかってきたような……


■ 2005.4.4   うすうす

 思ってたけど、やっぱり私はSF愚民らしい。

 『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』 フィリップ・K・ディック/浅倉久志 訳(ハヤカワ文庫)読了。
 みんなが声を揃えて傑作だと言うのにさっぱり面白くなかった……。


■ 2005.4.3   ハサミ男

 観てきました。殊能将之の同名の小説の映画化。主演、豊川悦司と麻生久美子。まあ俳優だけでも観て損はないんですが、お金はかけずに(俳優以外は)丁寧に作った映画だなあと思いました。サイコスリラーと銘打ってますが、そんな血みどろのシーンはありません。そのへんはかなり意識的に抑制して作っていると思う。小説は既読なんですが例によって真犯人しか覚えていないという状態で、この際これが逆に非常に都合がよかったみたいです。鵜の目鷹の目で伏線を探りつつ観るという悪趣味な真似をしてましたが、あの難しい世界をよく組み立てたなあと感心しきり。オープニングやエンディング、音楽や映像全体にどことなく古い推理映画っぽい雰囲気があって、それも結構好き。全体的に演技が若干安い部分があるのが玉に瑕。それでも最後まで緊張感が持続するし、最大のトリックをああいうふうに処理したのは映像の利点をうまく逆手に取ったなあと思います。原作ファンの点が全体に辛いのは、叙述トリックの根本のところが映像では一番最初にバラされてしまうからなんだろうけど、そりゃないものねだりというものでしょう。たぶん、原作どおりの視点設定(おっと、これネタバレ?)で映画化したら、きっととてつもなくつまんないと思うよ。こう書くとうっすらわかると思いますが、原作と映画とは読者/観客のミスリーディングへの誘導方向が若干違います。いや、違う……と思います。それを確認するために、これから原作もいっかい読みます。つーわけで一度処分したのにまた買ってしまったよ『ハサミ男』。こういうのをつける薬がないと言います。


■ 2005.4.2   年度

 が変わったのにこんなに実感ないのはじめてです。年度が区切りじゃない仕事に変わったせいか。

 四国スープというレトルトスープをたくさん貰ったので、以前殊能将之氏がやっていたIndofoodおみくじを真似してスープおみくじ。何のことはない、冷蔵庫の上の棚にスープのパックを並べてランダムに1つ引くだけです。というわけで今日は茸スープ。ついでにひさびさにご飯を炊いたら感動的に美味かった。やっぱ米の飯ですよ。






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