<TOP  4次元ポケットTOP  >>ゲルギエフ&マリインスキー管(2006.1.27)

ゲルギエフ/マリインスキー歌劇場管弦楽団 川崎公演
■ 2006.1.27 (日記より移動)
指揮:ワレリー・ゲルギエフ/マリインスキー歌劇場管弦楽団/ミューザ川崎
ムソルグスキー:歌劇『ホヴァンシチナ』より前奏曲『モスクワ河の夜明け』
チャイコフスキー:バレエ音楽『くるみ割り人形』より
 「序曲」
 「クララとくるみ割り人形」
 「くるみ割り人形とねずみの王様の戦い―くるみ割り人形の勝利、そして人形は王子に姿を変える」
 「クリスマス・ツリーの中で(冬の松林)」
 「情景と雪片のワルツ」
 「パ・ド・ドゥ」
 「終幕のワルツ―アポテオーズ(グランド・フィナーレ)」
ショスタコーヴィチ:交響曲第五番



 実のところ直前のワーグナーハイライトを聴きに行った人から「凄かった!」という感想を聞く一方、指輪のほうでは散々な評判を風の便りで聞いていたので期待と不安相半ばだったのですが、素晴らしかった!!! もう最初の音を聞いただけで来て良かったと思いました。やっぱり音が断然違います。特に低弦。特に大編成でもない普通の頭数で、どうしてあれだけ鳴るんだか。管も弦もとにかく音が太いです。チェロ・バスがごりごり弾きはじめたときの音の厚みにうっとり。やっぱりロシアものはこうでなきゃ。

 曲目はチャイコフスキー『くるみ割り人形』より、とショスタコーヴィチ交響曲第五番と聞いていたんだけど、前プロにムソルグスキーが1曲追加されたようです。歌劇『ホヴァンシチナ』より前奏曲『モスクワ河の夜明け』。全然知らない曲だったのでこれの出来としての良し悪しはよくわからない。実のところ、ショスタコーヴィチの五番が一番良かったのが意外。失礼な話ですが、『くるみ』はノリノリの上出来、タコ五はぐだぐだになるかなあ…とうっすら思ってたのですが、鮮やかに裏切ってくれました。むしろ前半の『くるみ』のほうが強行スケジュールのお疲れが祟ったのか、およよよよっというところがなきにしもあらず(特に管楽器)。それでもお家芸なのでさすがのまとまりではありますが。あれですか、慣れてる曲ほど油断するという(笑)

 『くるみ』は組曲じゃないんだろうなあと思っていたら、やはりバレエ音楽の全幕から「オケとして」の聴かせどころをピックアップした絶妙な選曲。組曲に入っている曲は「序曲」と「こんぺい糖の踊り」だけ。あとは、「クララとくるみ割り人形」、「くるみ割り人形とねずみの王様の戦い・勝利」、「クリスマスツリーの中で」、「情景と雪片のワルツ」、「パ・ド・ドゥ」に「グランド・フィナーレ」。組曲って管楽器のソロ・コンテストみたいな感じで、オケとしての面白さはないと思うんですよね。きっと弦の人は面白くなかろう。うちにある全曲版を聴いてて、組曲に入ってないけど良いなあ…と思っていた曲がほぼ全て聴けて大満足。しっかし、チャイコフスキーってやっぱり派手ですね。CDで聴いているとあまり気づかないんだけど、生演奏を観るとこんなにシンバルが大活躍しているとは(笑) しかもこのシンバルさんが面白くて。あのでかいシンバルをまるでピザの生地か何かのように軽々と持ち上げて、ひらひらと打ち合わせるのにもう目は釘付けです(またどこを見てるんだ)

 ショスタコーヴィチの五番は冒頭から打って変わってオケの集中力が違うのがわかる。管楽器のソロなんか総じて『くるみ』より音が格段に美しかった。特にフルートとホルン。トランペットは思っていたより大人しかった。いや、十分鳴ってるんですけど、所謂典型的なロシアオケの「アレ」を想像してるとちょっと拍子抜ける。ここでものを言うのが、金管低音がてこ入れせずとも轟々と鳴り響く低弦の迫力。二楽章冒頭のチェロ・バスにぞくぞく。この曲では二楽章の機能美が一番好きで、三楽章は恥ずかしながらCDで聴いているときにもいつも記憶が飛んでるんですが、ここでの木管は素晴らしかった。二楽章でのコミカルでヒステリックな金切り声から、三楽章での息も止まるような緊張感のピアニシモ。三楽章では客席全体が息を呑んでいるのがありありとわかりました。数年前にうちのオケでこの曲やったことあるんですが、全くよくこんな怖い曲やったよ。(そういえば二楽章のソロで指揮者に「もっと野蛮に吹け、そういうの得意だろうが」と言われたのを思い出した。んな無茶な。あの楽器で皆がフォルテッシモで鳴ってる中、野蛮さで際立つのは無理っすよ。ピアニシモのとこなら簡単に暴力的になるけどさ/笑) 閑話休題。とにかく、三楽章で客席が水を打ったように静まり返って聞き入ったなら、この曲はもう勝ったも同然。四楽章はもう突っ走るのみです。凄まじい音量とスピード感。最後のティンパニの強打と息の長い終音。最高でした。

 ブラヴォーの嵐と大拍手(団員からもゲルギーに拍手飛んでた)だったのですが、アンコールはやってくれませんでした。残念。名演奏の後とか選曲によってはアンコールはやってほしくないという人も多いでしょうけど、私はいくらでもやって欲しいぞ。この際ラテツキーとかでもオールオッケー(節操なし) しかし実際のとこお疲れだったのかな。翌日には関西公演だし、まあ無茶なスケジュールですねえ。

 全体にテンポ早めだな、と思っていたけど、家に帰ってバーンスタイン&NYフィルの演奏を聴きなおしたら、かなり早かったようですね。ゲルギーってレニーとタイプが似た指揮者かも。あまり細かく整理整頓するタイプではなく、オケの勢いに任せるというか。だからタコさんよりもチャイさんのほうが得意かなあ…と。あと指揮は摩訶不思議でした。かなり気をつけて見ていたけど、どうしても打点がわからないときがちょくちょく。なんであれで合うんだろうー。




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