イゼルローンのタコ部屋。

ノベリストバトン ――― 巽堂の場合。

After youのおふうさんから。このサイトに小説の端くれにも引っ掛かりそうなものは何一つないので、なんだか落ち着きません。大体そういうものからは足を洗……もとい。昔はしかにかかったかのように書き散らしていた時期が確かにあったし、他ジャンルで細々書いていたこともあるけど、今は書いてないですし、書きたいという欲望がほぼ枯……言い訳すればするほど感じ悪い感じなので、とっととお答えしたいと思います。例によって答えられない設問は曲解捏造の嵐。悪しからず。

>■小説を書いてどのくらい?

所謂「小説」の形式を意識してかろうじてお話と呼べる程度のものを書いたのは高校生のときがはじめて。でも継続してないし書いたものも公開してない(できない)し……そういう意味ではキャリアなし、でしょうな。

>■処女作はどんな話だった?

完結させたもの、ということであれば、異世界ファンタジーもので世界観はほぼ中世ヨーロッパ、ある王国がクーデターで滅亡するまでを廃位された王子の視点から書いたもの。ありえないことに長編。高校三年から浪人のときだったかな。こういうことをしているから落ちるわけです。とある作家のスタイルに衝撃を受けて、ほぼまるまるそのスタイルを使って書いたものだったから、自分でも発表は出来ないだろうなーと思いつつ、でもほぼ全ての世界が一気にどんと天から降ってきたので、書くしかなかった。

>■どういった話を書くことが多い?

多いっつーか、そもそも書いてないので。書きたかったもの、ということなら昔は志怪小説。幻想文学とかSFとかファンタジーとかを志向しているのかと思ってたけど、実は志怪小説だった模様。今なら強烈に毒のあるスラップスティックかパロディ。言うだけはタダっすからねー。

>■プロット(構成)は立てる派?立てない派?

短編は立てません。中〜長編は立てます。少なくとも章立ては決める。ってか設定とかプロット考えているほうが楽しくってですねー。思いついただけで使ってなかったり全然詰めてなかったりする中途半端なプロットやら設定やらが山ほど。頭の中はそういったものの廃墟って感じです。

>■視点は一人称(主観的)と三人称(客観的)、どちらが多い?

思いつく題材は大体どう考えても三人称で書いたほうがいいものばかりなのに、書きやすいのは一人称です。多分脱線が好きだからだと思う。三人称だと脱線は否応なしに場面転換になっちゃうでしょ。そうじゃなくて、その場面のまま語りが脱線するってのが好き。これ私の小説の好みにも顕著に現れてます。

>■長編体質?短編体質?

昔は思いつくのは全部長編ばかりだったけど、今は書けと言われても無理。書いているうちに飽きてくる。プロット立てた段階で満足しちゃうのです。あ、短編も結局そうか。脳内で完結させて、それで自家発電終了〜。歳を追うごとに燃費がよろしくなってまいりました。

>■今までで長編、短編合わせて何本書いた?

記憶を遡れる範囲で。

長編:4(うち完結が1、未完が3/オリジナルが3、二次創作が1)

中篇:2(全て完結/オリジナル1、二次創作1)

短編:17(全て完結/オリジナル1、二次創作16)

二次創作は全て他ジャンルです。廃墟が残ってますが、ここからはリンクしてません。オリジナルはあまりに太古の遺物なので、プリントアウトした紙が散逸していたりデータがなくなってたりで、ほとんど完全な形で残っていないという体たらく。

>■今まで書いた話でお気に入りを3つ。

お気に入りってのはないかな。記念碑的な意味ではじめて書いた長編はどうしても捨てられない。あと他ジャンルで書いた音楽ネタかつやおい(というには色気がないけど)の短編が一つ、自分の好きなものと萌えをほぼ全部出し切れたって意味で達成感はあった。

>■話を書くにあたって、自分なりのこだわり、ルールは?

話に限らず、文章を書くに当たって、ってことで。書きすぎない。ほっとくと際限なく饒舌かつ冗長になるから。

>■書いている時はBGM有り?無し?

考えなきゃいけないもののときは無し。こういう文章とか日記とかアホネタのときはガンガンかけてます。絵を描くときもかけるな。

>■これから挑戦したい話や世界観、目標等。

いや、ないっす。私の場合、お話は書きたいと思って書けるものじゃなく、ある日突然どかっと降ってきて、その状態で一気呵成に書かないと続かないので。(根気が)

>■憧れる作家さんを3人。

憧れるってぴんと来ないので、文章のスタイルとして影響を受けた作家を挙げてみます。作品がどんなに好きでも、そのスタイルを何としてでも手に入れたいと思うとは限らないんです私の場合。

芥川龍之介:いきなりスゴイの引っ張り出してきましたよコイツ。いくら深読みしてもしつくせない文章。『偸盗』、『藪の中』が一番好き。

中野美代子:本気で北大の中文受験しようかと思いました。(無理無理) 中国文学、文化学の権威で学術書も凄まじく面白いんですが、天は二物を与えたもうたもので、小説もすごくて腰抜かしました。究極のマニエリスト。学術書なら『カニバリズム論』、小説なら『契丹伝奇集』。

佐藤亜紀:この人が現れたときは衝撃的でした。日本人でこういう感性、こういうスタイルがあり得るのかと。文体に特徴ありまくりなので文体模写自体はやろうと思えばできるんだろうけど、あれを支える美意識はとてもじゃないけど真似できるようなものじゃない。最高傑作は『戦争の法』だと思う。

日野啓三:どこがどうと言えないんだけど、すごく好き。静謐なんだけど濃密。文体模写できないタイプの最筆頭。『砂丘が動くように』、『台風の眼』。

ストーリーどうでもいい体質が丸わかりですな。ついでに海外篇。と言っても翻訳書はどこまでが作家のスタイルでどこまでが翻訳者のスタイルかよくわからんです。

ジョセフ・ヘラー:『キャッチ=22』は私のオールタイムベストで常に三本指に入る。ドタバタですちゃらかでクレイジーで、それでいてずしりと重く、冷たく、でもほのかな希望が暖かい。文体を比較できるほど英文を読んでないのでわからないんですが、おそらくぶっきらぼうな文章だと思う。でもなんだか味があるのです。

アゴタ・クリストフ:この人もタイプは違うけど、文章としてのアプローチはヘラーに似ている気がする。事実だけを記すことだけで構成されている『悪童日記』のインパクトはすごい。

あとユーモア小説とかスラップスティックとかパロディとかに一括りにされるジャンルが大好きです。シリアスだからエライって価値基準には異議を唱えたい。小林信彦(『唐獅子』シリーズ、『僕たちの好きな戦争』、『ちはや振る奥の細道』がトップスリー)も、清水義範山藤章二も好きだし、引用魔という意味では殊能将之(@『ハサミ男』は傑作!)も好き。

なんか両極端ですね……。ていうか、「三人」はどこへ行った?!

>■次に回す素敵なノベリストを5人

すみません、バトンはウサギの穴に落っことしちゃいました。



(2006.4.25)




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巽堂/Tatsumidou