イゼルローンのタコ部屋。
銀河歌声喫茶 Vol.3 Perfect Day ただの、完璧な一日
ただの、完璧な一日
君は目にしたものは手に入れるだろうから
(David Bowie & Mick Ronson/訳:巽堂)
ヤン提督にこんな一日を過ごさせてあげたかった。 ヤン→アッテンのヤン視点ですな。とはいえ最後のリフレインで堂々たるアッテン・ヤン歌として認定(笑) そうだアッテンボロー! 欲しいものはとっとと手に入れてしまえ! 曲はルー・リードの言わずと知れたヒット。しみじみと味のあるバラードです。デヴィッド・ボウイが作ってたというのは意外でもあり、同時に納得もしました。道理でルー・リードの他の曲に比べて遥かに優雅でどこか退廃的だと思った。これ、ヤンが歌っていると思うとかなりイイ。ルー・リードの声はヤンのイメージより低めだけど(テノールじゃなくて多分バリトン)、ちょっとざらついた感じの声質と、呟くような囁くような歌い方のとき微妙に音程が不安定なところが、すごく「らしい」のです。そしてすごく気だるく色っぽい。 クライマックスの「ただこのまま夢中で/このまま夢中でいさせてくれ」が堪らなく悲痛です。原文は"You just keep me hangin' on." この夢のような時間から醒めたくない。置き去りにした問題なんか考えたくない。ささやかすぎるこんな一日でも、「わたし」にとってはこれ以上ない完璧な一日なのです。 詞だけ見ると最後のリフレインが唐突な気もしてたんですが、曲で通して聴くと違和感がないのが不思議。「このまま夢中でいさせてくれ」からの流れで考えるといいのか。このまま夢中でいる=「君」に手に入れられた状態になる? うわーうわー! アッテンボローの気持ちを知りながら表面上は気づいていない振りを装い、でも言外にそれ以上の関係に誘う確信犯なヤンがここにいますよ! ほのぼのに見せかけて魔性系だったか。ああ、誰かこの設定で小説書いてくれませんか?! 切実に! ……と、盛り上がっていたのですが! 新事実発覚です。最後のリフレイン、私の持っているCDの歌詞カードでは、"You're goin' to reap just what you saw" になっているのですが、これは"You're goin' to reap just what you sow" ではないかというご指摘をいただきました。 結論から言えば、その通りだと思いました。reapはもともと「刈り取る」とか言う意味で、当初から「見たものを刈り取る」って何? と思ったのは確かです。しかしそこは妄想力で上のような解釈に至ったわけですが、sow(種を蒔く)のほうが文脈として明らかに自然です。しかも、気になって調べたところ"You reap what you sow"という、そのまんまの言い回しが英語にあるとわかりました。直訳すると「自分で蒔いた種は自分で刈れ」で、「身から出た錆」「自分で責任取れ」などに近いニュアンスらしい。こうなると、全然意味が変わってきます。 最後のリフレインは、さしずめ "君が蒔いた種なんだから" になるでしょうか。このまま夢中でいたい、こうなったのも君のせいだよ、自業自得だからね、と怨じているわけです。うひょー、魔性系暗黒度はこちらのほうが遥かに高い! それに、どっちにしてもラブラブだね!(笑) しかし、たった一文字のミスプリも馬鹿になりませんね。一応、訳した後、歌詞カードについていた日本語訳で答え合わせして、おおよそ解釈が一致していたんですが、歌詞カードの訳もこのミスプリに騙されて間違っていたというわけ。いや、そもそも英語の言い回しを知らなかったのが問題なのか。大変失礼しました。 そして、ご指摘をくださった遊佐薫さん、本当にどうもありがとうございました。謝して訂正いたします。
(2005.5.11/5.26/5.30 revised)
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巽堂/Tatsumidou
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